5年間の沈黙を破って昨年は臨界温度に新記録が生まれ,室温の約半分(高圧下で150K以上)を達成した.水銀系やCu(or Ag)-BaCaCu系など,新物質におけるピンニングカはかなり高いことも期待され,今後の材料展開に希望を与えた.また,ホウ炭化物で23Kの新超伝導体が発見されたことも,注目される.混合状態では,ピンニングカとキャリア濃度の関係も確立してきた.実用化は,液体ヘリウム不要の冷凍機直冷型超伝導磁石のパワーリードとしてまず始まろうとしている,高温超伝導体の電子構造を巡る理論,実験はともに詳細を議論できる段階に達し,いよいよ,低エネルギー領域で起きる超伝導を論じられる時が来た.本報告では,これまでの概略をまとめつつ,新たな展開を解説したい.
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