応用物理
Online ISSN : 2188-2290
Print ISSN : 0369-8009
80 巻, 9 号
『応用物理』 第80巻 第9号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
企画の意図
総合報告
  • 河田 聡
    2011 年 80 巻 9 号 p. 757-765
    発行日: 2011/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    金属中に生じるプラズマ共鳴は,金属がナノ構造をもったときにその表面においていくつかの特異な光現象を発現する.これを利用したナノ分解能の近接場顕微鏡やナノ光回路,単一分子計測や分子センサ,癌【がん】治療や太陽電池,レーザー,ホログラフィなど,さまざまな分野で表面プラズモン活用のアイデアが提案されている.この科学は「プラズモニクス」と呼ばれ,ナノフォトニクスの新しい分野として,さらなる発展が期待される.本稿では,プラズモニクスの原理とその限界について概説し,未来を探る.

解説
  • 上野 貢生, 三澤 弘明
    2011 年 80 巻 9 号 p. 766-771
    発行日: 2011/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    光化学の研究において,分子の吸収断面積によらず,照射された光を高効率に分子に吸収させる「光の有効利用」という新しい概念が注目されている.我々は,光と分子を強く結合させ,光の有効利用を可能にする光反応場として,局在プラズモン共鳴によって高い光電場増強効果を示す金属のナノ構造体に着目した.金属ナノ構造が示す光電場増強効果は,分子の光励起を高効率に誘起し,微弱な光によるフォトレジスト材料の空間選択的な2光子重合反応を可能にした.また,金ナノ構造を配列した酸化チタン電極を用いた光電気化学測定により,可視・近赤外光を光電変換できることも明らかにした.

  • 高原 淳一
    2011 年 80 巻 9 号 p. 772-778
    発行日: 2011/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    プラズモニック導波路は,金属と誘電体の界面を伝搬する表面プラズモン・ポラリトンを利用する金属光導波路である.金属は可視光域で負誘電体であり,プラズモニック導波路は負誘電体光導波路に分類される.誘電体光導波路では回折限界のために光ビーム径の微細化が制限されるが,負誘電体を用いることによって,原理的に光ビーム径をナノメートルオーダまで縮小することが可能となる.このため,プラズモニック導波路はナノプラズモニクスのキーコンポーネントとなっており,将来はナノ光集積回路への応用も期待されている.プラズモニック導波路の原理と研究の現状について解説する.

  • 石原 一
    2011 年 80 巻 9 号 p. 779-784
    発行日: 2011/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    金属微細構造近傍では入射光に比べて著しく高強度の電場を伴う局在プラズモンが発生する.この局在光電場を利用すれば分子のような反応断面積の小さな対象に光を効率よく作用させることができるため,これを利用して高感度な計測や観測,運動制御を実現するための研究が盛んになっている.最近では,単に増強場が分子に働きかける側面だけではなく,金属構造と分子が量子力学的な結合系として振る舞う点に注目することによって分子光学の新しい可能性を探求する研究も現れてきた.本稿ではこのような視点を取り入れた理論的考察を例にして,局在プラズモンを利用した分子光学の新しい可能性を議論する.

最近の展望
研究紹介
  • 伊原 学
    2011 年 80 巻 9 号 p. 803-807
    発行日: 2011/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    色素増感太陽電池は,一方の導電ガラス上に,焼成によって作成され,内表面に色素が担持されている数十ナノメートルオーダのチタニア多孔質膜を有し,対極となる他方の導電ガラスとの間にI-/I3- の酸化還元反応を起こす電解液が満たされた構造を有する湿式太陽電池である.本稿では,金属ナノ粒子の局在表面プラズモンにより形成される近接場光の局所電場増強効果を利用し,色素のMLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移による光キャリヤ生成を促進し,光電流の増加によって色素増感太陽電池の光電変換効率が向上した結果について述べる.また,これらの変換効率の向上には,金属ナノ粒子の表面修飾物が大きな役割を果たしていることがわかった.

  • 納谷 昌之, 都丸 雄一, 堀井 和由
    2011 年 80 巻 9 号 p. 808-812
    発行日: 2011/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    ナノフォトニクス技術を用いるバイオセンシングは,近接場光による分子オーダの局所領域への照明によって,従来の伝搬光を用いる光センサでは得られなかった高いS/Nを可能とする技術である.特にプラズモン共鳴によって増強された近接場光を用いることで,極めて高感度のセンシングが可能になることから,バイオセンシングの基盤技術として期待され,表面プラズモン共鳴(SPR)を用いるセンサが既に実用化されている.本稿では,次世代のナノフォトニクスバイオセンサとして,表面プラズモン増強蛍光(SPFS)および表面増強ラマン散乱(SERS)について紹介を行う.

基礎講座
  • 瀬田 勝男
    2011 年 80 巻 9 号 p. 814-819
    発行日: 2011/09/10
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル フリー

    「測定の不確かさ」は,七つの国際機関の協力で1993年に発行された「計測における不確かさの表現のガイド」により国際的に使用が推奨されることとなった比較的新しい概念である.その後,世界的な規模でその概念や推定法の普及活動が行われた結果,今日では,適合性評価活動での使用を中心に,計測の信頼性を示す定量的パラメータとして「誤差」より有力な用語となっている.本稿では,その経緯,背景,適合性評価での役割と推定法のあらましについて概説する.

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