共形寫像は等角寫像とも云はれ二次元の問題について等位線及流線(指力線)を知るに都合よいので應用物理學としても大事なものであります.併しこれは凾數論の問題のやうに思ふので自分ではあまり計算したり書いたりはしないやうであります.私はこゝに主張するのは共形寫像を描くのはさう六ケしいことでないことと今まで面倒なものであるから一つ一つ老へて見ないで他の本にあるのを轉用し從つて間違つた圖が多く而も有名な本にさへあるごとを注意しようと思ひ筆をとつたのであります.實は私も数年前間違つて居る岡を用ゐ,それ以來注意して見るとJeansの電磁氣の本Handbuch der Physikの静電氣の部, R. Courantめ凾數論その他一般に讀まれて居る本の共形寫像の圖には誤があります.そのうちPrášilの本が圖に誤を見ません.たゞその中の數字に僅か誤を見るのみであります.これらの計算と圖を檢査して見ると,同時にその方法を整理し共形寫像の系統を作りなるべく簡單に描くべき方法を考へ元のであります.もとよりこれは古い問題であり取りたてゝ私の考へたものでないのかも知れませんが少なくも同じやうな立場で論じてないと思ひます.私の屬する研究室の助手桑折正治君(奮姓佐々木)の援けにより五ケ年の計算の結果澤出の共形寫像圖を得ましたのでいつれ著書及び論文として發表するつもりでありますが,こゝにその計算の例として,こ二次元の問題に於て一點が湧源にして,一直線が吸源なる場合を論じ,次に一直線に湧源が分布し他の一直線に吸源が分布する場合を論じませう.
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