近代科学と近代技術とは,その出発点においては異なった流れを形成し,相互の連関は原則的には存在しなかった,しかし,20世紀後半になって,科学と技術の間に新しい関係が生じた.それは相互依存的な関係ということができる.ナノテクノロジーの出現も,そうした動きの一つとして位置づけられる.20世紀技術全体の特徴としてあげられるのは,大量生産技術であり,そのための規格化,標準化であり,また領域化であった.しかし,20世紀後半になると,複合化の傾向が強くなった.特に生命科学にかかわる技術の進展の中で,その成果を織り込んだ複合技術が目立ち始めている.ナノテクノロジー(すべてではないだろうが)の重要な部分は,そうした傾向を強固に裏づける結果となっていることに注目しておきたい.
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