1) ウニの未受精卵および受精卵の灰化試料について熱中性子照射による放射化分析を行ない, 卵内のナトリウムとカリウムの量を測定した。
2) カリウムは外液 (海水) 中に少量しかふくまれていないのに, 卵内には多量ふくまれている。一方, ナトリウムは卵内には少ない。
3) カリウムとナトリウムの比は未受精卵では11.2, 受精後10分の卵では8.2となり, 受精反応を境としてイオンの移動があるように思われる。
4) 生物材料など比較的多量の試料を得られないもののナトリウムとカリウムの分析では, 炎光分析よりも放射化分析のほうがその検出感度がすぐれている。
なお, この研究は日本原子力研究所東海研究所において行なったもので, 研究炉管理部坂東昭次氏に技術的援助をいただいた。また, 名古屋大学菅島臨海実験所長椙山正雄教授にはウニ卵の提供をいただくとともに有益なご助言をいただいた。
ここにしるして感謝の意を表わしたい。この研究は昭和36年度文部省科学研究費および昭和37年度日本学術振興会流動研究費によった。
抄録全体を表示