pおよびnのエンハンスメント型MOSトランジスターに電子線を照射すると, しきい値電圧は負の方向に移動し, さらに線量を増加すると, 逆に正の方向に移動する。これは照射によって, 電子―正孔対が生じ, このうち酸化シリコン中に比較的安定な形で残った正電荷がしきい値電圧をより負の方向に移動させるものと考えられる。さらに線量を増加すると, 酸化シリコン中に電子の捕獲センターが生成し, 一度捕獲された電子と正電荷が再結合し, 酸化シリコン中の正電荷の数を減少せしめるため, これまでとは逆にしきい値電圧をより正の方向に移動せしめると考えられる。
得られた実験結果にもとづき, 金属電極側に2.5Vかけて照射した場合に正電荷が集中する実効距離 (SiO
2中のSiO
2-Si界面からの距離) を計算したところ410であることがわかった。
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