ミクロオートラジオグラフの分解能に主眼をおいて共同実験を行なった。実験のあらましは, まず放射化した銀と放射化しない銀の薄板を交互に積層し圧延して試料を作製した。銀の各層の厚さは2.5μ~17μである。この試料を使いコンタクト法, ストリップ法, ディップ法によって, 試料の厚さ, 分離膜の厚さ, 乳剤の加圧, 露出中の湿度が分解能に及ぼす影響について詳細に調べた。その結果は以下のとおりである。
(1) 放射化した銀と放射化しない銀の薄板を積層, 加圧することにより, オートラジオグラフィにきわめて適した試験体を作ることができた。
(2) コンタグト法の場合は加圧法や半湿式法によらない限り, 一般に分解能は非常に低いようである。
(3) ストリップ法では層厚5~7μが分解の限界のようである。
(4) 分離膜厚の分解能に及ぼす影響は大きく, その物質の選択と膜厚の調節が重要である。
(5) 露出中の湿度の影響が大きく, 30~40%の湿度に調節する (飽和塩化カルシウム水溶液の雰囲気) のがよい。
(6) 実験結果から得たレスポンス関数と, 理論計算から求めたそれとはきわめて良い一致がみられ, この計算方法は他の場合にも利用できるであろう。
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