核異性体を (γ, γ′) 反応によって作る原子核過程は古くから知られているが, これを放射化分析, γ線量測定あるいはホットアトム化学などに応用する研究は特色ある方法であるにもかかわらず従来あまり広く用いられていなかった。しかし最近に至るまでの研究の積み重ねによって, 重要な応用分野が開けつつあり, これに対する国際的な評価が高まってきた。本稿は1977年10月日本学術振興会の招きにより来日したハンガリー同位体研究所長Veres博士と池田, 吉原らの共同討議による研究成果のまとめである。
(γ, γ′) 反応は畜産上重要なセレンの放射化分析に利用され, あるいは考古学的な貨幣中の銀含量の決定に利用されている。迅速な非破壊分析が可能であり, かつ中性子放射化分析のように残留放射能を生じないなどの優れた点をもっている。
また高線量のγ線源に対してこの反応を用いると, γ線量測定ができ, ひいてはそのγ線源のキュリー数の決定ができる。さらに原子炉の使用済み燃料の燃焼度 (burnout) を評価するさいに, この反応を適用することが可能である。
固体ホットアトム化学でホットアトム効果ρ出現するしきいエネルギー (出現エネルギー) はこの方法ではじめて実測された。
115In (γ, γ′)
115mIn反応をインジウムedta錯体中で起こし, 錯体からはずれる
115mIn
3+を化学的手法で観察する。ホットアトム化学での重要な成果である。
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