近世の伊万里伝承の磁器片より円盤状薄片を作成し, 人工的にγ線を照射し放射線誘起熱ルミネッセンスカラー画像 (TLCI) と三次元熱ルミネッセンススペクトル観測から, 今回の磁器試料片はすべて赤色熱ルミネッセンス (RTL) 特性を有しており, 不均一なTLCIパターンを示すことを確認した。これらの結果に基づき, 一旦天然放射線由来のRTLを測定した後, 同一円盤状薄片試料をいくつかの既知線量で照射しRTL測定を繰り返す, 再現 (リジェネレーション) 法を適用し天然蓄積線量値を得た。一方, 磁器片への天然放射性核種由来の放射線線量率 (年間線量) 評価のために, 磁器片に含まれるK, U, Thの定量を高周波誘導結合プラズマ質量分析器 (ICP-MS) により行った。高感度仕様のRTL測定から得た天然蓄積線量値と, 永続放射平衡の仮定のもとで見積もった年間線量を基に, 数個の磁器片に対して焼成後200年前後であるとの結果が得られ, 若い側のRTL年代評価の可能性を確認できた。
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