二酸化アクチノイド化合物AnO2を例にとり,NMR法を用いた低温電子物性研究について解説する。AnO2系では,An核とO核のNMRを観測できることが特長である。核燃料であるUO2に代表されるこの系は,高温での挙動に興味が持たれることが多いが,最近,基底状態も多極子秩序という新しい電子状態であることがわかり注目されている。アクチノイド化合物低温物性の面白さを紹介する。
アクチノイド化合物は魅力的な物性物理の宝庫である。重い電子系超伝導や強磁性超伝導,「隠れた秩序」など多彩な物理が知られている。このような研究のフロンティアを切り拓いていく上で純良単結晶育成は極めて重要である。ネプツニウムも含むアクチノイド化合物の単結晶育成の方法のうち,チョクラルスキー法,フラックス法,ブリッジマン法,気相成長法及び関連する技術について筆者の具体例を元に解説する。
アクチノイド元素のメスバウアー分光は,欧米を中心とした海外では1958年のメスバウアー効果の発見後まもなく開始され,半世紀ほどの歴史を有している。アクチノイド元素のメスバウアー効果は10核種程度で発見されているが,物質科学への応用は限定的である。本稿ではアクチノイド化合物の物質研究の歴史と有用性について,238U及び237Np核のメスバウアー分光を中心に述べる。