汚染排ガス処理への応用拡大が検討される300keV以下の低エネルギー電子ビーム (EB) は, 汚染排ガスに入射する際に散乱し, その結果ガス中において不均一な吸収線量率分布を与える。そこで, 高効率な排ガス処理システムの構築のためには, 線量計測が必要不可欠である。本研究では, 空気を満たした照射容器内で二つのポリマーフィルム型線量計による深度線量率の計測, アルミニウム製全吸収型カロリメータによる深度エネルギーフルエンス率の計測を行うとともに, 半経験的電子輸送コード (EDMULTコード) による深度線量率分布の計算結果と合わせて, 300keVのEB照射場の線量計測に関する研究を行った。その結果, CTA線量計及びGafchromic線量計を用いて実測した深度線量率が, 空気中でのビームの広がりを考慮することにより, EDMULTコードによる計算結果と分布の傾向がよく一致した。また試作したカロリメータによるエネルギーフルエンス率は, フィルム型線量計による値に比べて8~11%小さかった。この差は, 実験誤差を考えると非常に小さな値である。以上のことから, 実際に線量計測を行う低エネルギーEB照射場で, 本研究で開発したカロリメータにより予めポリマーフィルム線量計を校正しておくことにより, これらの線量計による線量率計測が可能となることが明らかとなった。
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