放射線管理からみた, われわれのサイクロトロン核医学施設の概要と, それを運用した結果体験した問題と, その改善などについて述べた。それを要約するとつぎのとおりである。
(1) サイクロトロン核医学施設は, 一般核医学施設にはない法規上の手続きがあり, やや複雑多岐である。
(2) 超小型サイクロトロンで製造されるRIは, 短半減期 (最長
18Fの110分) で主に気体状であり, 排気設備をとくに重視しなければならない。それには, 排風総量を増すためにできるだけ施設を大きくすることが望ましい。排気ガスモニタは必須であり,
150 (
T1/2=2分) などの超短半減期RIを測定する関係上, 時間応答特性の速い装置が必要である。また, 高濃度RI排出を防ぐために, 排気系のダンパは高気密のものが必須である。
(3) 前項と関連して, 廃ガス回収ラインとその貯溜タンクが不可欠であり, それは十分な容量のものを必要とすることを忘れてはならない。気体状RIを供給するラインの遮蔽には, われわれは5cm厚さの鉛を使用したが, もっと薄いものでも十分であった。
この排気管理については, 一般核医学検査での,
133Xeなどの気体状RI使用でも共通することが云えることをとくに付記したい。
(4) 排水設備は, 使用RIが気体状のものが多く, また, 短半減期のために, 安全管理上あまり問題にならないが, PET測定時, 多数の血液サンプルの測定が必要で, 測定後のシリンジの洗浄に水の使用量が多くなることも考慮する必要がある。
(5) サイクロトロンから発生する放射線と放射性物質の漏洩を防ぐために, 十分な厚さの遮蔽壁と気密構造が必要である。できれば地下に設置したほうがよいと考える。
以上, われわれの施設はさまざまな試行錯誤の過程もあったが, さまざまな改善を加え, 放射線安全管理の上からみても基本体制は整ったと考える。また, 一般核医学施設との併設は実際上便利である。
われわれの体験が今後サイクロトロン核医学施設を計画する上で少しでも役立てば幸いである。
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