γ線照射した幾つかの長石粒子からの熱ルミネセンス (TL) をオンライン分光測定したところ, 150~200℃付近に青色 (350~550nm領域の発光でBTLと略記) と遠赤色 (710nmに発光ピークを持つ発光でfar-RTLと略記) に大別できる発光が観察された。TLグロー曲線の形とTL感度の放射線量依存性はfar-TLとBTL間で異なっており, アルカリ長石類は強いTL, Caに富む斜長石類は弱いTLが見られ, 長石の種類間でもまた異なったTL特性を示した。
放射線照射した曹長石を室温で7か月間保存したところ, far-RTLの減少は無視できる程度であったがBTLでは18%にも及ぶ減少が観測された。後者は良く知られた長石特有の異常減少 (anomalous fading) 効果由来の現象であろう。ここでの結果では, far-RTL源が長石中で安定であり, TL-年代測定に適していることを示唆している。しかしながら, far-RTL強度そのものが弱いため検出限界が2~3Gyまでとなり, 1000年より若い試料には適用できなくなる。最後に, このfar-RTLの発光機構には, Fe
3+へのエネルギー移動ではなく, むしろFe
3+-不純物からFe
2+への電荷移動が関与していると考えることができた。
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