著者らは,イネを用いて根のマグネシウム(Mg)吸収活性を調べるため,
28Mgのイメージング解析を行った。その結果,根端1mmまでの領域では,他の領域と比較して単位長さあたり2倍以上のMg吸収量が示された。続いて酸性土壌における作物生育障害要因の一つであるアルミニウム(Al)が根のMg吸収活性に与える影響について調べたところ,24時間のAl処理により根の基部側領域のMg吸収量が約2倍に上昇した。これは,Al耐性であるイネの生存戦略として,Alに応答してMg吸収活性を上昇させる機構が存在する可能性が考えられた。次に,阻害剤がMg吸収に与える影響について調べたところ,脱共役剤であるcarbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazoneや2,4-dinitrophenolの代謝阻害剤,並びにATPase特異的阻害剤であるバナジン酸で処理した場合,Mg吸収量は根全体において均一な割合で減少した。一方,水和したMg
2+イオンのアナログであるhexaaminecobalt(III)で処理したところ,根端に近いほどMg吸収の阻害度が大きいことが示された。これらの結果から,代謝エネルギーを利用したMg吸収機構が根全体で存在すること,根端では水和したMg
2+の輸送システムの寄与が大きいことが示唆された。
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