アガリクス (
Agaricus blazei Murill) は, 日本など東アジア各国で一般的な生薬の一つである。天然成分の生薬は, 微生物により容易に汚染される。γ線照射は, 生薬の殺菌技術として知られている。ESRは照射生薬のラジカルの検知に使用される。著者らは, γ線殺菌前後のアガリクスに生成されるラジカルをESRを用いて調べた。ESRスペクトルでは
g=2.0に有機フリーラジカル由来の鋭い1本線信号とMn
2+イオンの超微細構造による6本線, 更に
g=4.0にFe
3+と推定される信号を観測した。
アガリクス中のラジカルの緩和時間は, 酸素の存在により異なることがわかった。ESR試料管内の空気をArで置換すると,
T1の値は空気中と比較して1桁大きくなった。逐次飽和曲線は, Ar存在下では空気中より早い飽和を示した。これらから, アガリクスのラジカルは, 酸素の影響をうけることがわかった。同様の緩和挙動は照射アガリクスでもみられた。照射アガリクスを酸素のない状態でESR計測することは照射処理時の照射量を検知するのに有用であると結論した。
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