L-[11C]メチオニン注射液に混入する恐れのあるヨウ素由来不純物の測定法について検討した。試料には、L-[11C]メチオニン注射液、及び気化したI2を直接あるいはアスカライトカラムに通じた後にメチオニン合成を模した経路に導入・回収した試料を用いた。ICP-MS法、HPLC法、ジエチルパラフェニレンジアミン法により、全ヨウ素、ヨウ化物イオン、I2を各々測定した。導入したI2は、アスカライトカラムによりほとんどが捕集された。L-[11C]メチオニン注射液中のヨウ素由来不純物は、主にヨウ化物イオンとして存在し、HPLC法により検出できた。HPLC法により、簡便かつ迅速にL-[11C]メチオニン製剤中のヨウ素由来不純物を評価でき、製造工程管理に役立つと考えられた。
医薬品開発プロセスにおいて,放射性炭素(14C)標識化合物をヒトに単回投与してヒト薬物動態を評価するマイクロドーズ臨床試験が実用化されつつあり,医薬品開発の低コスト化とリードタイムの大幅短縮が期待されている。本研究では,マイクロドーズ臨床試験における高感度と低コストを兼ね備えた簡便な14C測定への適用を念頭に,高感度レーザー分光に基づく生体試料中14C分析システムを開発した。
本研究では,バーミキュライト質土壌中のカリウム(K)動態を明らかにすることを目的とし,異なる鉱物組成を有する土壌を用いてKの吸着実験およびカラム実験を行った。吸着実験の結果,バーミキュライト質土壌では非バーミキュライト質土壌に比べて高いK吸着能を示した。放射性同位体トレーサーとして42Kを用いたカラム実験から,投与したKの移動深度に土壌間の違いは見られなかったものの,非バーミキュライト質土壌では交換態として,バーミキュライト質土壌では固定態として土壌中のKが保持された。
宇宙未知素粒子の探索は,宇宙物理学および素粒子物理学の両分野に対して大きな意義を持つ研究テーマである。世界各地で探索用の高感度放射線検出器が開発されている。NaI(Tl)検出器は古くから知られた放射線検出器で,その特性はよく知られているため,宇宙暗黒物質の探索やその他の基礎物理学に関わる実験に広く応用されてきた。宇宙未知素粒子探索には,予想される計数率の低さから放射性不純物の濃度を数µBq/kgまで低減させる必要がある。本論文では,最近の超高純度放射線検出器の動向及び著者が取り組んでいるNaI(Tl)検出器による宇宙暗黒物質探索計画について解説する。