フェルト状とネット状の活性炭素繊維フィルタについて,CH3[131I]に対する捕集効率をJIS Z 4336の試験条件で求めた。両者とも高い捕集効率を示した。放射能が既知のCH3[131I]を含む活性炭素繊維フィルタに取扱いが容易なGM管を密着して求めた計数値はその放射能と直線関係にあり,GM管による測定でも活性炭素繊維フィルタ内の131Iの定量が可能であることが明らかになった。GM管による測定法は,緊急時における131Iのモニタリングに十分適用できると考えられる。
自然放射性核種を含む廃棄物の処分や超ウラン核種を含む廃棄物について,浅地中処分の基準をどこに求めるか考察し,地殻に存在するラジウムの代表的な数値である10 nCi/gが広く判断の目安として取り入れられていることを確認した1, 2)。本資料では,免除とクリアランスの考え方を廃棄物処分の観点から再構築する。我が国では,放射性物質が,免除とクリアランスの区分に分別されたと確認された後は,放射性物質ではなくなるので,放射線防護から外れると理解されている。しかしながら,LNTモデルを前提とする放射線防護体系では,ここから放射性物質として扱わないとする閾値はない。そのため,諸外国では,免除・クリアランスを柔軟に運用しており,特に廃棄物処分ではそれが顕著である。IAEAも指摘しているように,国際的に統一したクリアランスレベルを定めるのは,クリアランス対象物が国際流通する懸念があるためである。当該国で完結する廃棄物処分においては,その基準は各国の裁量に任されていると理解してよい。ここでは,各国の処分における,免除・クリアランスの適用を確認し,ともすると硬直しがちな我が国の放射線防護に柔軟性を取り入れる参考とする。
東京電力福島第一原子力発電所事故によって,放射性物質が海洋に放出された。主要な放出経路として大気からの降下と福島第一原発敷地からの直接漏洩がある。それぞれの放出率の推定と共に,沿岸域及び北太平洋スケールの環境動態解析が行われた。また,海底堆積物及び海生生物への移行過程の解析が行われ,その際の高線量粒子の役割についての検討も開始されている。これまでの研究成果をまとめ,将来予測も含めた今度の展望を述べた。
東京電力福島第一原子力発電所の事故後に得られた放射性セシウムの環境移行データの解析の結果,事故以前のグローバルフォールアウト137Cs研究で得た環境移行パラメータ値に年々近づいている傾向がみられた。現在は,一定の割合の放射性セシウムが環境中を循環する「平衡状態」になりつつあるといえる。今後は,長期的な被ばく線量評価のための数学モデルに用いる適切なパラメータ値を整備して,確度と精度の高い将来予測をすることが期待される。