果汁中のビタミンCにおよぼすγ線の影響について, 各種濃度の柑橘果汁を試料とし, 12~27℃の範囲において, 1×10
4r~21×10
4rのγ線照射実験を行い, つぎの結果が得られた。
1) 単位線量照射による還元型ビタミンCの減少率は, 果汁濃度の差により, 著しい差のあることが認められた。
2) 一定照射温度のもとで, 一定濃度果汁にγ線照射を行う場合, 単位線量照射により減少する還元型ビタミンC量は, その時に存在する還元型ビタミンC量に比例する, すなわち, 単位線量照射後における還元型ビタミンCの残存率は一定であることが認められた。
3) 単位線量照射により減少する還元型ビタミンCの減少率に関与する因子は, 照射温度, 共存する物質の濃度であることが認められた。
4) 果汁にγ線照射を行う場合, 高濃度において低温で照射を行うことにより, 果汁中のビタミンCの減少を最少限度にとどめ得ることが認められた。
5) 共存物質濃度, 照射温度, 放射線の種類を考慮することにより, ビタミンCによる, 大線量のchemical dosimetryが可能であろうと推定された。
終りに臨み, 本研究に
60Co照射装置の使用を許可された, 国立東京第二病院放射線科山下久雄医博並びに操作について種々御指導を賜った安藤氏に対し深く感謝の意を表する次第である。
なお本報告は1957年3月日本農芸化学関東支部会において発表した。
抄録全体を表示