本研究では,マウス脳における低線量X線(0.1~2.0 Gy)照射の4時間~7日後の抗酸化機能の変化特性,および抗酸化物質であるアスコルビン酸(500 mg/kg体重)の投与併用による複合効果に関して検討した。その結果,低線量照射により概ね過酸化脂質量の減少とSOD活性・HSP量の増加が示された。また,0.5 Gy照射とアスコルビン酸投与の併用により過酸化脂質量の有意な減少が示されたことから,抗酸化の複合効果も示唆できた。
少量核燃料物質の安全管理に関する教育訓練について,国内外における規制の最近の動向と合わせて紹介する。少量核燃料物質の取扱者等への教育訓練は,法令上の要求事項ではないが,監督官庁が変更となったことで管理基準の厳格化が進んでいる。本稿では,筆者らの大学で開始した,国際規制物資の取扱者等に対する安全管理教育の内容を紹介するとともに,今後の展開について述べる。
東京電力福島第一原子力発電所事故により放射性核種が大気中に放出され,福島県及びその近県に広く降下した。陸域に沈着した放射性セシウムのおよそ70%が森林に沈着しており,福島第一原発事故の環境影響評価と環境修復のためには森林における放射性セシウムの分布と移行状況を把握することが必要である。本稿では,これまでの研究成果をとりまとめ,将来予測も含めた今後の展望を述べた。
東京電力福島第一原子力発電所事故に由来する放射性セシウムの大部分は土壌に残留する。土壌に存在する層状鉱物の層間負電荷への吸着反応が土壌系外への移動を大幅に遅延させるためである。本稿では,放射性セシウムの環境挙動を規定する吸着サイトの定量方法とその原理について紹介するとともに,その吸着サイト量を説明変数とした土壌-植物間放射性Cs移行予測モデルの概要と日本の土壌への適用に向けた課題について紹介する。