近年,培養細胞に生体組織の持つ配向性を付与することが求められている。本研究では,電子線グラフト重合法により得た温度応答性細胞培養膜(n-TRCCM)に対して,フォトリソグラフィープロセスにより作製したLine & Spaceからなる微細構造体のモールドを使い,熱インプリント法によりそのパターンをn-TRCCMに転写することで,微細構造型温度応答性細胞培養膜(p-TRCCM)を作製した。p-TRCCM上における培養実験ではパターンに沿った細胞増殖の確認に成功した。
μSR法は,磁性体研究に対して,微視的かつ動的な情報を与えるため,重要な分光法の一つである。本稿では,1章の序文のあと,2章において,磁性体におけるμSRの基本的事項についてまとめた。3章では,μSRの適用例として,幾何学的にスピンフラストレート磁性体における実際の研究例についていくつか紹介した。マルチフェロイクス物質におけるμSRスペクトルに対する電場効果についても触れた。
ミュオンは第2世代のレプトンでスピン1/2を持つ素粒子である。ミュオンのスピンは電場や磁場と双極子能率を通じて相互作用する。ミュオンの磁気双極子能率は素粒子標準理論を用いて極めて精密に計算することができる。また,ミュオンの電気双極子の能率は,標準理論では非常に小さい値を持つと見積もられている。これらの双極子能率を高精度・高感度で測定することにより,素粒子標準模型を超える物理現象が探索できる。本稿ではミュオン双極子能率の精密測定とそれで探る素粒子物理学の研究について述べる。