手のひらサイズのミニメスバウアー分光器(MIMOS II: Miniaturized Mössbauer Spectrometer II)が自走式の火星探査機ローバー(スピリッツとオポチュニティ)に搭載され,火星において鉱物の同定に威力を発揮した。このMIMOS IIと最近改良されたMIMOS IIA及び同時に搭載された元素分析用α線励起蛍光X線分析器を紹介する。オポチュニティローバーが2004年1月に火星のメリディアニ平原に到着し,3月にはビクトリア・クレーターの岩石中に鉄ミョウバン石(ジャロサイト:(K,Na,X
+)Fe
3(SO
4)
2(OH)
6)を発見した。これは水酸化物イオン(OH
-)を含むことから火星ではかつて水が存在したことを示す初めての有力な化学的証拠になった。さらに,スピリッツローバーがコロンビア丘のクロビスの岩石で針鉄鉱(ゲータイト:α-FeOOH)を検出した。これも過去に水があったことを示す重要な証拠になっている。鉄ミョウバン石,それに関連する鉱物,たとえば三笠石やヤバパイト,並びに硫酸鉄化合物のメスバウアーパラメーターと構造と物性についても述べる。
抄録全体を表示