本研究ではラドン療法の新規適応症の探索のため,強制水泳(FST)誘導うつ病マウスに対するラドン吸入による抗うつ効果の有無について検討した。その結果,FSTに伴ううつ様行動や脳内ノルアドレナリン・ドーパミンなどのモノアミンの減少に対し,2,000 Bq/m3ラドンの24時間吸入により抑制することが示唆できた。これらの知見などから,ラドン療法の適応症の一つとして抗うつ効果の可能性のあることがわかった。
生育中のカキのへたに脱脂綿を固定して濃度の異なる溶存態の137Cs(10, 100, 1000 Bq/kg)を添加し,収穫した果実の137Csを測定した。その結果,添加した137Csは果肉へ移行し,その濃度は添加した137Csの量に依存することが確認された。一方,脱脂綿を介して添加した137Csの果肉への移行率は4.01%(1000 Bq/kg)と4.24%(100 Bq/kg)となり,添加する水の濃度には影響されないことが明らかとなった。また,生産した果実の137Cs濃度が高いと想定された3カ所のほ場において,雨天時に果実のへたに落ちてくる水や樹枝等を流れる水を分析した結果,137Csが含まれる水があったものの,果肉の137Cs濃度に大きな影響を及ぼした可能性は低いことが示された。
近年開発されたタウイメージングリガンドは,アルツハイマー病のタウ蛋白病変に特異的に結合するとともに,その病理学的重症度を反映した蓄積分布を呈することが報告され,アルツハイマー病の病理学的進展を可視化しうることが示されている。またタウ蛋白病変を主要病態とする非アルツハイマー病性認知症においても,その疾患特異領域におけるリガンドの集積が認められ,病態の解明や診断の一助となることが期待されている。
パルス中性子源に設置されたチョッパー型中性子分光器は広い運動量・エネルギー空間のダイナミクスを測定することが可能であり,液体・ソフトマターから固体まで幅広い対象における研究に用いられている。J-PARCにおいても4台のチョッパー型中性子分光器が設置されているが,四季はその中でも最も早く稼働した装置であり,10−1~102 meVのエネルギー領域におけるダイナミクスを大強度・高効率で測定することが可能である。本稿では四季における固体ダイナミクス研究の例を単結晶試料の測定例を基に紹介する。
高分解能チョッパー分光器(HRC)は物質のダイナミクスを高分解能かつ広いエネルギー領域で探査する中性子非弾性散乱装置である。中性子ブリルアン散乱の実験環境を整備し,多結晶や液体などのダイナミクス研究を可能にした。通常のエネルギー運動量空間での高分解能実験では,種々の強相関電子系の物性を解明した。サブeV中性子分光により高エネルギー磁気励起の測定をすすめ,電子励起観測の可能性も模索している。