われわれはHCMの症例での左室収縮動態を
99mTc-MIBIによる心電図同期心筋断層像を用いて検討した。心筋交感神経活性の影響をみるため, これらの所見をMIBG心筋イメージングと対比した。
gated-SPECTを11例のHCM, 13例の健常例で施行した。左室の各部での収縮様式を評価するため, 多方向長軸断層を作成し, 左室を17の区域に区分した。各区域で収縮に伴うカウントの変化 (%CC) が計測された, そして相対応する区域での健常例の%CCと比較した。収縮の不均一の指標として各症例17区域でのR波から最大収縮までの時間の標準偏差 (SD) を計測した。HCMでは安静時にMIBGイメージング (initial, delayed) , Tlイメージングを施行した。心筋交感神経活性の指標として次のパラメータを計測した。 (1) Uptake Ratio は MIBG (delayed image) の% Uptake のTlの% Uptake に対する比, (2) %WOはinitial image, delayed imageでのMIBG活性の変化率, (3) MIBG分布の不均一性はdelayed imageでのMIBGのCV, (4) Defect Score はdelayed imageでのMIBGの欠損の広がり。
HCMの187区域中87区域 (47%) で%CCの低下が見られた, そしてこの区域は主として肥大部 (心尖部, 中隔, 前壁) に存在した。HCMにおける収縮の不均一性 (SD) は健常例より大であった (5.4±1.4vs.3.5±0.6, p<0.01) 。HCMにおいてUptake Ratio, %WOは%CCの低下区域数と相関しなかったが, CV, Defect Scoreは%CCの低下区域数と相関を示した (
r=0.56,
r=0.63, おのおのp<0.05) 。
%CCの異常は主として心尖部, 中隔, 前壁に見られたがMIBGの欠損は主として下壁に見られた。他方, SDはMIBGの指標とよく相関した (Uptake Ratioと
r=-0.68, p<0.05, %WOとr=0.78, p<0.78, CVと
r=0.63, p<0.05, Defect Scoreと
r=0.78, p<0.01) 。SDは左室の早期拡張期充満指標とも負の相関を示した (
r=-0.79, p<0.01) 。これらの所見はHCMにおける不均一収縮は心筋交感神経活性と緊密に関連し, HCMでしばしば見られる拡張期充満異常の一因と考えられた。gated-SPECTはHCMのpathophysiologyに対する重要な情報をもたらす。
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