核爆発実験による放射性降下物中の核種の比率やその時間的変化は, 単一な核分裂による核種の理論値を, そのまま用いることは不適当である。しかし, もし単一な核分裂と同じか, もしくは非常にそれと近い条件のフォールアウトであるならば, それらの理論値と比較することができる。そこでフォールアウトの, γ線ニネルギースペクトルを測定し, それらのスペクトルからγ線エネルギーの比率と, その時間的変化をもとめて単一な核分裂による値と比較するとともに, それらの平均7線エネルギーをも評価した。
測定試料は, 1961年9月より1964年9, 月までの, 空気中塵埃を連続集塵して各月ごとに集めたものである。この試料について, γ線スペクトロメーターでエネルギースペクトルを測定し, そのスペクトルのフォトピークから, おのおののγ線エネルギーの占める割合と平均γ線エネルギーをもとめた。
その結果, この期間のフォールアウトの各γ線エネルギーの比率 (核種の割合でもある) は, Hunter and Ballouの表とかなりよく一致している。すなわち, 単一の核分裂と非常に近い条件であったといえる。その中でもっとも大きい割合を占めているエネルギーは, 0.76MeV (
95Zr-
95Nb) で, 50%から90%近くをしめている。一方フォールアウトの平均γ線エネルギーは, エネルギースペクトルが異なっても変化なくほぼ一定で, その平均値は, 0.68MeVである。この値はHunter and Ballouの表から計算した平均7線エネルギーよりいくぶん高めである。
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