最近5年間において東大泌尿器科で施行された腎移植症例9例中8例について, その移植前後における貧血の動態を赤血球代謝面より把握する目的で, 赤血球内のadenine nucleotidesおよびリン酸エステルの定量を行なうとともに, 放射性リン (
32P) を用いて, 各画分への転入率を測定し, 検討を行なった。
腎移植前の尿毒症の状態ではATP, SMP, DPG, Cell Piの増加が著明であり,
32Pの転入率もSDP, DPG, Cell Piで高値を示していた。かくのごとく解糖系の中間産物が高値を示したことは, DPG以下の代謝経路で何らかの障害が起こっていることを示唆するものである。ATP高値は溶血による幼若な赤血球の存在が考えられる。
腎移植後貧血が回復するにつれてadenine nucleotides, リン酸エステルおよびそれへの
32P転入率も正常化するが, chronic rejectionにより再び貧血に落ち入った症例では, その代謝パターンは再び尿毒症のそれと同じ傾向を示す。
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