RADIOISOTOPES
Online ISSN : 1884-4111
Print ISSN : 0033-8303
ISSN-L : 0033-8303
60 巻, 8 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 田野井 慶太朗, 斉藤 貴之, 岩田 直子, 大前 芳美, 広瀬 農, 小林 奈通子, 岩田 錬, 中西 友子
    2011 年 60 巻 8 号 p. 299-304
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    著者らは,入手が困難である28Mgを製造,精製し,イネの根によるMg吸収解析を行った。純アルミニウム箔に,27Al(α,3p)28Mgの核反応を試みて28Mgを製造した。カラム精製を経た後,およそ1MBqのキャリアフリーの28Mgを得ることができた。この放射性同位元素を用いてイネの根のMg吸収速度を算出した。すなわち,0.1mM及び5.0mMのMg濃度の溶液に28Mgを加え,そこに根を15から30分間浸すことで28Mgを吸収させた後,28Mgを画像として検出した。得られた画像よりイネの根から吸収されたMg量を定量した結果,溶液が5.0mMの条件下におけるMg吸収速度は,0.1mMの場合よりも6から7倍大きいことがわかった。更に,溶液のMg濃度を0.025~10mMの9段階に設定したところ,溶液のMg濃度が低い時ほど根のMg吸収能力は高まった。以上から根は溶液のMg濃度が低い場合には,Mgを能動的に吸収する機構を有することが示された。
ノート
  • 寺村 易予, 小須田 茂, 京藤 幸重, 直居 豊, 小野 正裕, 宮沢 幸司, 伊藤 靖利, 比留間 智子
    2011 年 60 巻 8 号 p. 305-310
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    18F-FDG PET/CT検査の説明に関して検査直前にアンケート調査を行い,18F-FDG PET/CT検査の運用向上のための資料とすることを目的とした。対象は18F-FDG PET/CT未経験の悪性腫瘍患者100例であった。施設,設備,運用面での患者からの希望がアンケート調査から把握できた。FDG PET/CTの検査直前に繰り返し検査説明を行うことは,検査への不安を緩和ないし除去できる効果がある。核医学専門医による詳細な説明は検査を受けることに対して安心感を与え,悪性腫瘍及びその検査結果の不安,懸念を緩和する方向に働く。
速報
  • 野川 憲夫, 橋本 健, 田野井 慶太朗, 中西 友子, 二瓶 直登, 小野 勇治
    2011 年 60 巻 8 号 p. 311-315
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    福島第一原子力発電所事故後36日目(4月20日)に福島県の水田及び畑作土壌を採取し放射性のセシウム並びにヨウ素の溶出実験を行った。4月20日に採取した土壌には137Cs,134Cs及び131Iが検出され,水を用いた場合の溶出率は水田,畑土壌共に,約20%の137Cs,134Cs及び131Iが溶出した。抽出を繰り返しても2回目以降の溶離はほとんどみられなかった。水田土壌については,ヨウ化カリウム,ヨウ化セシウム,肥料,消石灰或いはセメント等を加えて1日放置して溶離を試みたが,溶出率は水抽出と同様の結果であった。
  • 田野井 慶太朗, 橋本 健, 桜井 健太, 二瓶 直登, 小野 勇治, 中西 友子
    2011 年 60 巻 8 号 p. 317-322
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    著者らは,2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故由来の放射性物質の麦への蓄積様式について,γ線放出核種の同定及び分布について明らかにした。5月15日のコムギについて核種分析したところ,134Csと137Csが検出され,これらを足した放射性セシウム濃度は,枯葉で約284500Bq/kgと穂の約300Bq/kgと比較して約1000倍と突出して高い値であった。次に,5月26日のコムギについて,各葉位,穂及び茎に分けて同様に測定したところ,放射性セシウム濃度は,事故当時既に展開していた葉において高く,事故後展開した葉も含め,古い葉の順に高い値であり,穂が最も低い濃度であった。これら放射性物質の分布を可視化したところ,既に展開中の葉においてスポット状に強いシグナルが観察された。これらの結果から,事故時展開していた葉で高濃度に検出される放射性物質は,放射性降下物が直接付着したものが主であることが示唆された。一方で,事故時展開していなかった葉においても,古い順に放射性セシウム濃度が高かったことから,植物体内において葉へ移行した放射性セシウムは転流(再分配)されにくいことが示唆された。
  • 塩沢 昌, 田野井 慶太朗, 根本 圭介, 吉田 修一郎, 西田 和弘, 橋本 健, 桜井 健太, 中西 友子, 二瓶 直登, 小野 勇治
    2011 年 60 巻 8 号 p. 323-328
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    福島第一原子力発電所事故で放射性物質が多量に降下してから約2か月後に,耕起されていない水田の深さ15cmまでの表土を厚さ1~5cmの6層に分割してサンプリングし,放射性セシウム(134Csと137Cs)の鉛直濃度分布を求めた結果,放射性Csの88%が0~3cmに,96%が0~5cmに止まっていた。しかし,量的に大半は表面付近に存在するものの,15~20cmの層まで新たに降下した放射性Csの影響が及んでいた。濃度分布から求めた放射性Csの平均移動距離は約1.7cmで,70日間の雨量(148mm)から蒸発散量を引いて体積含水率で割った水分子の平均移動距離は約20cmと推定され,土壌への収着により,Csの移流速度は水の移流速度に比べて1/10であった。しかし,文献にみられる実験室で測定した収着平衡時の土壌固相と土壌水との間の分配係数から計算される移流速度よりは2~3桁大きく,現場の移動現象が収着平衡からほど遠いことを示している。一方,耕起された水田では,表層の高濃度の放射性セシウムが0~15cmの作土層内に混合されて平均値(約4000Bq/kg)となっていた。
  • 大下 誠一, 川越 義則, 安永 円理子, 高田 大輔, 中西 友子, 田野井 慶太朗, 牧野 義雄, 佐々木 治人
    2011 年 60 巻 8 号 p. 329-333
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    福島原子力発電所から約230km離れた,東京都西東京市における研究圃場において原発事故後に栽培された野菜及び土壌の,134Csと137Csの放射能を測定した。試料は植え付け47日後のジャガイモの葉,並びに,苗の定植40日後のキャベツの外葉を用いた。両者共,134Csと137Csの総量は9Bq/kg以下となり,摂取制限に関する指標値500Bq/kgより低い値であった。土壌は約130Bq/kgであり,天然の40Kの約290Bq/kgと比較しても低い値であった。キャベツの外葉を水で洗浄する前後の放射能像をイメージングプレートにより得たが変化は見られなかった。
  • 橋本 健, 田野井 慶太朗, 桜井 健太, 飯本 武, 野川 憲夫, 桧垣 正吾, 小坂 尚樹, 高橋 友継, 榎本 百合子, 小野山 一郎 ...
    2011 年 60 巻 8 号 p. 335-338
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    福島第一原子力発電所事故の3週後(4月8日)及び12週後(6月3日)に東京大学大学院農学生命科学研究科附属牧場(原発から直線距離で約130km南方の茨城県笠間市に位置する)において採取した土壌,牧草,乳牛飲料用井戸水,及び牛乳中の131I,134Cs及び137Csの放射能濃度を測定したので報告する。測定の結果,飼料中の放射性核種は速やかに牛乳中に移行することがわかった。しかし,いずれの測定でも牛乳中の131I,134Cs及び137Csの濃度は国の暫定許容値(放射性ヨウ素:300Bq/kg,放射性セシウム:200Bq/kg)を下回る値であった。
資料
  • 社団法人 日本アイソトープ協会 医学・薬学部会  核医学イメージング・検査技術専門委員会
    2011 年 60 巻 8 号 p. 339-362
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/29
    ジャーナル オープンアクセス
    日本アイソトープ協会医学・薬学部会核医学イメージング・検査技術専門委員会では,核医学検査時の事故発生の情報共有を通して核医学検査の安全確保を向上させることを目的に,1986年から3年ごとに調査を行っており,2010年に第9回調査を行った。全国の医療機関1288施設及び衛生検査所14施設の計1302施設を対象とし,1016施設(回収率78.0%)から回答が寄せられた。
    核医学検査時の事故及び事故未然例は第6回調査(2001年)と比し53.3%に減少したが,事故未然例の減少が主因であった。術者の機器操作に原因する事故未然例の頻度は前回調査時より大幅に減少した。特に機器への接触等が減少していた。事故例では,術者の被検者への対応に関することが半数を占めていた。核医学機器の故障・破損は第7回(2004年)調査と比較して39.2%に減少した。事故防止対策では,「被検者への説明と介助などケアの徹底」と「再教育」で事故や事故未然事例の70%は防止できると考えられる。核医学検査における安全管理の改善では,固定具の改善やRI誤投与防止を含めた医療安全マニュアルの作成を挙げている。
feedback
Top