RADIOISOTOPES
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64 巻 , 5 号
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原著
  • 北島 えりか, 高橋 千太郎, 木梨 友子, 久保田 善久, 岡安 隆一, 田中 浩基, 高田 真志, 小野 公二
    2015 年 64 巻 5 号 p. 291-297
    発行日: 2015/05/15
    公開日: 2015/05/28
    ジャーナル オープンアクセス
    中性子ビームの重要な利用法の一つにホウ素中性子捕捉療法(BNCT)がある。近年,加速器を使用したBNCTが計画されているが,その際,がん組織や近傍の正常組織は,装置ごとに異なるエネルギープロファイルを有する中性子ビームを受ける可能性がある。本研究では,エネルギープロファイルの異なる中性子ビームの細胞致死作用とDNA二重鎖切断誘発作用をCHO/K1細胞とその放射線感受性変異株のxrs-5細胞で調べた。細胞致死効果に関しては,放射線医学総合研究所が共同利用に供しているNASBEE(平均エネルギー2MeV)の中性子ビームが,京都大学原子炉実験所の熱・熱外中性子ビーム(KUR-HWF)より効果は高かった。一方,53BP1の免疫染色によるフォーカスアッセイ法で調べたところ,同一照射線量では,DNA二重鎖切断の誘発数に両ビームの間で有意な差は認められなかった。
ノート
  • 伊井 一夫, 田野井 慶太朗, 宇野 義雄, 登 達也, 廣瀬 農, 小林 奈通子, 二瓶 直登, 小川 唯史, 田尾 陽一, 菅野 宗夫, ...
    2015 年 64 巻 5 号 p. 299-310
    発行日: 2015/05/15
    公開日: 2015/05/28
    ジャーナル オープンアクセス
    2011年の原発事故以来,イネの作付制限地域に指定された飯舘村で,2012年に佐須・前田地区で,2013年には佐須・前田・小宮地区で水稲の試験栽培を行った。2012年において,除染の度合いにより土壌の放射性セシウム(134Cs+137Cs)濃度(0~15cm平均)が2000から6000Bq/kgの佐須・前田圃場では,玄米の放射性セシウム濃度は最大でも40Bq/kgであり,除染度合いに応じたセシウム濃度の低減効果が見られた。さらにカリウム(K)施肥による玄米のセシウム濃度の低減効果が確認された。土壌の交換性Kの濃度が高いほど,玄米の放射性セシウム濃度は低くなる傾向があるが,交換性K(K2O換算)が,20mg/100g乾燥土壌以上の区画では10Bq/kgとほぼ一定であった。一方,2013年において土壌の放射性セシウム濃度が除染後も8000Bq/kgを超えた小宮圃場では,玄米の放射性セシウム濃度が100Bq/kgを超えたサンプルが一部で見られた。これらの結果は,飯舘村において,適切な除染,K施肥により,水稲玄米への放射性セシウムを低減させ,基準値(100Bq/kg)を十分にクリアできることを示している。
  • 平出 哲也, 片山 淳, 正木 信行
    2015 年 64 巻 5 号 p. 311-318
    発行日: 2015/05/15
    公開日: 2015/05/28
    ジャーナル オープンアクセス
    東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い環境中に多くの放射性物質が放出された。食品中におけるこれら放射性物質の基準値は放射性セシウムの量で評価が行われており,この基準値は他の放射性物質の影響も評価して決められている。実際に,環境中に存在する放射性セシウムの量は半導体検出器を用いて得られるエネルギースペクトル上の全吸収ピークを評価することで行われている。しかし,この方法も含め従来の測定方法は放射性物質と検出器の距離に対して2乗に反比例する検出効率を有しており,周囲に汚染があれば,正しい評価が難しくなるため,試料と検出器は重たい鉛などでできた遮蔽容器に入れる必要がある。また,NaI(Tl)シンチレーション検出器の場合は,各ピークの分離などが容易でなく,より安全な評価ということで,全カウントで評価が行われたりしている。今回,著者らは放射性セシウムの中で,複数のγ線を放出する134Csに着目した簡便な計測法を提案する。現在,環境中に存在している人工放射性核種のうち,複数のγ線を放出するもので比較的多く存在しているものは134Csのみである。134Csに関しては,605keVと796keVのγ線の放出比が高く,これらを同時計測することで,距離の4乗に反比例する検出効率を実現できる。その結果、この手法は、周囲の汚染などに影響を受けにくくなる。また、同時計測によって発生するカウントのみで評価を行うため,スペクトル上のピーク解析など必要なく,NaI(Tl)シンチレーション検出器を用いてもピーク分離などを行う必要がない。この手法は鉛などの遮蔽体を必要としないため,環境中において非破壊でその場測定によって,放射能の評価を行うことが可能になる。
資料
総説
  • 稲葉 次郎
    2015 年 64 巻 5 号 p. 335-349
    発行日: 2015/05/15
    公開日: 2015/05/28
    ジャーナル オープンアクセス
    環境に放出された放射性核種による被ばく評価にあたっては,放射性核種の動きを正しくモデル化し,適切なコンパートメント間移行パラメータを用いることが重要である。ここでは,①土壌から農作物へ,②飼料から畜産物へ,③環境水から水生生物への3種類の移行パラメータに注目し,それぞれの定義,これまでに報告されているパラメータ値とその測定法,パラメータ値に対する影響因子等について紹介する。福島原発事故により環境汚染の事態が生じたが,そこからもできる限りの移行パラメータの抽出が望まれる。
連載講座
中性子散乱による原子・分子のダイナミクスの観測
  • 井上 倫太郎
    2015 年 64 巻 5 号 p. 351-363
    発行日: 2015/05/15
    公開日: 2015/05/28
    ジャーナル オープンアクセス
    低速中性子は,物質中の原子・分子運動のエネルギーと同じ程度のエネルギーを有するため,散乱過程においてエネルギーのやり取り・すなわち非弾性・準弾性散乱が起こる。高分子を含むソフトマターは,分子が持つ自由度故に非常に広い時間・空間スケールにおいてダイナミクスが構造と同様に階層的に存在する。しかしながら小角散乱などにより行われる構造解析と比較すると,ソフトマター系における中性子によるダイナミクス測定はそれほど活発に行われていない。ソフトマターの機能・物性を十分に理解するためには構造のみならずダイナミクスを調べることが必要不可欠である。本稿においては,主に固体状態の高分子のダイナミクスに注目して,(1)低エネルギー励起,(2)結晶弾性率の評価,(3)局所緩和過程“速い過程”,(4)ガス透過と局所的ダイナミクスとの相関の4点を選び解説した。
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