原子力利用や宇宙空間での研究を初めとして, 電気・電子機器などに組み込まれている有機絶縁材料は放射線の存在する環境下で使用される機会が増えている。本論文は, 有機絶縁材料の表面放電特性に及ぼすγ線照射の影響について検討した。試料としては, 変性ポリフェニレンオキサイド, ポリブチレンナフタレート, ガラス布基材エポキシ樹脂積層板およびポリブチレンテレフタレートの4種類を使用した。試料へのγ線照射は
60Coのγ線源を利用して空気中で行った。照射線量率は10kGy/h, また, 照射全線量は100kGyおよび1MGyである。針電極と板電極を試料の表面に対向させて配置し, 印加電圧波形を直流インパルスとした場合の放電量を測定した。その結果は, γ線の照射に伴い材料表面の接触角が小さくなる材料は放電量が大きくなり, 接触が大きくなる材料は放電量が小さくなる。変性ポリフェニレンオキサイド, ポリブチレンナフタレートおよびガラス布基材エポキシ樹脂積層板の場合はγ線の照射によって放電量が少なくなる傾向を示した。ポリブチレンテレフタレートの場合ではγ線照射量の増加とともに放電量が大きくなった。以上の結果から, 試料表面の放電量がγ線の照射により架橋するタイプの試料は少なくなり, 一方, 分解するタイプの試料は多くなることを示した。
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