CALorimetric Electron Telescope(CALET)実験は,国際宇宙ステーションにおける高エネルギー宇宙線物理学のミッションであり,米国,イタリアとの国際共同研究として日本が主導的な役割を果たしている。CALETの主要な目的としては,高エネルギー電子の近傍加速源の探求,銀河宇宙線の加速・伝播機構の解明,及び暗黒物質の探索などがある。2015年の10月中旬に観測を開始して以来,高エネルギーシャワー(>10 GeV)をトリガーする運用が,現在まで継続的かつ安定的に行われおり,その観測成果について報告する。
我々は,中国チベット自治区の標高4,300 mの高原に多数のシンチレーション検出器を配置し,宇宙から絶え間なく降り注ぐ高エネルギー放射線(宇宙線)の観測を行っている。本稿では,「空気シャワー」と呼ばれる宇宙線が作る大気中での粒子カスケードを用いた宇宙線の観測原理を解説し,その観測結果に基づいて得られた宇宙線及びその周辺分野についての知見をレヴューする。また,現在計画されている南半球における新しい宇宙線実験の計画を紹介する。
Telescope Array(TA)実験は北半球最大の宇宙線観測装置で,1018 eVを超える最高エネルギー宇宙線観測を継続している。近年では,TALE実験の増設によって1016 eVまで観測しきい値を下げるとともに,現在建設中のTA×4実験によって3,000 km2まで検出面積を拡張する。ここでは,これらの装置を紹介するとともに,これまでの10年間の観測よって得られた最新の結果,特にエネルギースペクトル,宇宙線化学組成,到来方向異方性について報告する。
CTA(Cherenkov Telescope Array)大口径望遠鏡4基をスペイン,ラパルマに現在建設中である。CTA大口径望遠鏡は23 mの口径を持ち,これら4基のアレイは従来の装置と比較して20 GeV–1 TeVのエネルギー領域で一桁高い感度を持つ。これら,CTA国際宇宙ガンマ線天文台,CTA大口径望遠鏡建設の現状と,またCTAがこれから開こうとしているサイエンスについて述べる。
数百keVから数十MeVに渡るMeVγ線での宇宙観測は,元素合成や粒子加速に関して決定的な情報が得られると古くから期待されている一方で,その観測は進んでいない。我々は光学原理に基づくイメージング分光が可能な電子飛跡検出型コンプトン望遠鏡ETCCを開発しており,2度の気球実験からETCCによる高感度天体観測が実現可能であることを示した(SMILE: Sub-MeV/MeV gamma-ray Imaging Loaded-onballoon Experiments)。今後数年の内に科学観測を開始し,MeVγ線天文学を開拓していく。
我々は,世界最高角度分解能(0.08 degree @ 1–2 GeV),世界初偏光有感,世界最大口径面積(~10 m2)を実現するエマルションガンマ線望遠鏡の長時間気球フライト繰り返しによる宇宙高エネルギーガンマ線(10 MeV–100 GeV)精密観測計画GRAINE(Gamma-Ray Astro-Imager with Nuclear Emulsion)を推し進めている。本計画の概要や現状及び展望について紹介する。
Super-Kamiokandeは岐阜県神岡の地下1000 mの場所に建設された50,000 tの超純水を使用した水チェレンコフ型観測装置である。1996年から観測を開始し,大気ニュートリノ,太陽ニュートリノの観測によりニュートリノ振動を発見した。現在,観測装置を高度化し,過去の超新星爆発起源のニュートリノ観測の準備をしている。Super-Kamiokandeがニュートリノ振動によって得てきた成果,今後の天体ニュートリノ観測によって期待できる成果について述べる。
太陽中性子(>100 MeV)の地上観測は,太陽フレアに伴う太陽高エネルギー粒子加速機構の解明を目指して行われている。太陽中性子は加速されたイオンと太陽大気との相互作用で生成され,惑星間空間磁場に散乱されずに到達する。中性子が高エネルギー電磁波と同時に生成されていると仮定すれば太陽表面では高効率の加速は働いていないことまではわかっていて,仮定なしでの加速効率の解明を最終目的として観測が継続されている。