トリチウム(
3H又はT)が環境中に及ぼす影響と水素を含む化合物との反応性を定量的に評価するために,6-Chloronicotinic Acid又は5,6-Dichloronicotinic AcidとHTO蒸気との間の水素同位体交換反応(T-for-H交換反応)を,50~70℃の温度範囲で固―気系で観測した。得られたデータに
A"-McKayプロット法を適用することで,この反応における各官能基の速度定数(
k)を求めた。これらの
kを相互比較した結果,以下のことが明らかになった。(1) ピリジン誘導体においてCOOH基の反応性はCl基の数や位置の違いに依存しており,次のようになった;(
m-位及び
p-位のCl基):(
p-位のCl基):(Cl基なし)=1.9:1.5:1.0。(2) 未知のニコチン酸誘導体の反応性は,本研究で得られたHammettプロットを使って推定することができる。(3)
A"-McKayプロット法を使うことで,官能基を持つ物質においてTの挙動をマスク剤なしで非破壊的,定量的に解析することができる。(4) 本研究で用いられた手法は,物質における官能基の反応性を求めるための手法として役立つことが期待される。
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