Arginineの負荷は成長ホルモン分泌を促進することから, 血中の成長ホルモン測定用診断薬として用いられている。このarginineの生体内運命を明らかにするため,
14C-arginineを500mg/kg体重の割合でマウスに静脈注射し, 凍結全身オートラジオグラフィによる生体内分布を検討した。静注後60分の放射能濃度は腎臓, 膵臓, 消化管壁, 骨格筋, 唾液腺などに高くみられ, 皮ふ, 睾丸, 副腎, 脳下垂体には中程度の活性が観察された。しかし肝臓, 肺臓, 血液, 脳および褐色脂肪組織への取込みは少なかった。投与後6時間には皮ふ, 消化管壁, 胸腺皮質などにまだかなりの放射能が認められたが, 骨格筋の活性は顕著に減少した。マウス組織をTCAでhomogenizeし, TCA抽出画分およびTCA不溶タンパク画分の放射能取込み量を求めたところ, 投与後初期にはTCA画分がタンパク画分に比して高く, とくに膵臓と腸管壁が著明に高かった。投与後24時間のTCA画分は各組織とも著しく減少したが, 脳および筋肉のタンパク画分への取込み量は増加した。一方, 各組織中に取り込まれた全放射能に対する
14C-arginineの割合を求めたところ, 投与後30分では筋肉中に約30%, これに対して肝臓はきわめて低く3%であった。肝中代謝物の大部分は
14C-ureaであった。
14C-arginineを投与後24時間までの尿中に, 投与した放射能の74%が排泄された。尿中放射能の約75%は
14C-ureaであり, 未変化の
14C-arginineは約9%であった。呼気の累積
14CO
2は24時間まで投与放射能の8.3%であった。
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