メチル基を導入した1,4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン型架橋配位子を用いた集積型鉄二価錯体を合成した。PXRD測定よりメチル基を導入する数によって錯体の構造は異なったが、同じ架橋配位子であればアニオン性配位子を変えても同じ構造であることがわかった。メスバウアー分光法と磁化率測定より、メチル基を2つ導入した場合では温度に依存したスピン転移が観測されたが、4つ導入した場合ではスピン転移は見られなかった。
中学校及び高等学校の理科教員養成のための放射線教育カリキュラムを提案する。このカリキュラムでは,コンクリートなどに含まれる40Kから放出されるγ線エネルギーの測定,物質中のγ線透過率の測定など,これまでのカリキュラムより実践的で高度な内容を取り扱う。このカリキュラムの特徴の一つは,放射線計測システムとしてCdZnTe半導体検出器を教材に用いることである。CdZnTe半導体検出器は安価で小型であるだけでなく,取り扱いも簡便であるため,放射線教育用カリキュラムへの使用に適している。もう一つの特徴は,γ線源として,表示付認証機器である放射能標準γ線源を教材に用いることである。これにより,講義室での高度放射線教育カリキュラムの実践が可能になる。
放射性廃棄物を処分する場合に,自然環境中に存在する自然放射性核種との関係をどのように考えればよいか,その観点から諸外国における放射性廃棄物の取り扱いをまとめた。また,1980年代にDe Minimisとして世界が概念を共有していた,取るに足らない放射能に対する考え方,及び,それを世界が合意した免除,クリアランスといった概念の構築についてまとめた。さらに,放射性廃棄物の処分や免除,クリアランスについて,各国がどのように制度化したのか,そして,この制度化に当たり,ウラン核種を代表とする自然放射性核種がどのように関係しているか確認する。
転移性去勢抵抗性前立腺癌に対する治療として,α線放出核種である塩化ラジウムが承認された。塩化ラジウムとプラセボの無作為第III相試験であるALSYMPCA studyで,関連事象の抑制効果に加えて生存率の向上が確認され,転移性去勢抵抗性前立腺癌における臨床的有用性が期待される。しかし,その至適使用方法確立には,未だ解決すべき課題があることを認識して,日常臨床で使用していくことが望まれる。
東京電力福島第一原子力発電所の事故により福島県を中心として広範囲が放射性物質により汚染された。このような汚染については我が国では法的制度の整備がなされていなかったが,平成24年1月に「放射性物質汚染対処特別措置法」が施行され本格的に除染が始まった。ここでは本格除染に至るまでの経緯,除染ガイドライン,除染の実施,除染効果の検証,除染廃棄物の貯蔵の状況について得られた知見,教訓(Lessons learned)を交えて紹介する。