RADIOISOTOPES

原著

福島県と新潟市の湖沼に及ぼす福島第一原子力発電所事故の影響

神田直之, 王瑩, 片岡憲昭, 山田龍太, 今泉洋, 狩野直樹

2015 年 64 巻 12 号 p. 717-728
発行日: 2015/12/15
公開日: 2015/12/29

DOIhttps://doi.org/10.3769/radioisotopes.64.717

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2011年3月12～15日に，福島第一原子力発電所事故が起こった。この事故は，近県に放射性物質汚染を引き起こした。本研究では，汚染された地域に及ぼすこの事故の影響を明らかにするため，新潟市と福島県における幾つかの湖沼の湖沼水と湖沼泥を採取した。湖沼水においては，固体高分子膜電解(SPE)装置によりトリチウム(T)比放射能の濃縮を行い，T-比放射能を液シンで測定した。このように測定したT-比放射能に基づき，環境に及ぼすこの事故の影響を調査した。それと同時に，湖沼泥中の放射性セシウムの比放射能も測定した。その結果，福島第一原子力発電所事故が近くの湖沼(例えば，福島県や新潟市)に及ぼす影響が定量的に明らかになった。以上のことから，新潟市に及ぼすこの事故の影響はかなり小さく，事故は徐々に収束していることがわかった。

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Development of X-ray/Gamma-Ray Imaging System Based on Hydrogenated Amorphous Silicon/Crystalline Silicon Heterojunction Strip Detector

Xiaosong Xiaosong, Yang TIAN, Kenji SHIMAZOE, Takeshi FUJIWARA, Hiroyu ...

2015 年 64 巻 12 号 p. 729-735
発行日: 2015/12/15
公開日: 2015/12/29

DOIhttps://doi.org/10.3769/radioisotopes.64.729

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A high-energy X-ray/gamma-ray imaging system based on a hydrogenated amorphous silicon(a-Si:H)/crystalline silicon(c-Si) heterojunction strip detector was developed. The imaging system will be applied in nondestructive testing of concrete structures. We fabricated 50-channel heterojunction strip detectors with a1mm pitch on 500μm thick p-type silicon wafers. The average leakage current was 2.9nA per channel at 120V reverse bias. Energy resolutions of 2.8keV FWHM at 59.5keV and 2.9keV FWHM at 122keV were obtained at 18℃. The position sensitivity of the strip detector was measured by edge-on irradiation with a ¹³⁷Cs gamma-ray source. Edge-on gamma-ray imaging of a tungsten object using the prototype was performed. A module consisting of 20 stacked silicon strip detectors is being constructed.

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技術報告

10種のインスタントコーヒーで作るコーヒーブロック線源の比較評価

河野孝央, 安藤佳明, 泉雄一

2015 年 64 巻 12 号 p. 737-744
発行日: 2015/12/15
公開日: 2015/12/29

DOIhttps://doi.org/10.3769/radioisotopes.64.737

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インスタントコーヒーは天然起源の放射性核種：⁴⁰Kを含んでいるため，自然放射能と自然放射線を説明するためのわかりやすい教材といえる。本研究ではインスタントコーヒー10種に圧縮成形法を適用してコーヒーブロック線源を製作し，形状，重量，⁴⁰K含有量を調べた。その結果，形状と重量は10種ともほぼ同じで，⁴⁰K含有量にも大差はなく，10種の平均で16.6Bq(レギュラーコーヒーの約1.7倍)であった。

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資料

アジアにおける放射線中等教育への我が国の経験の活用と今後の展開

飯本武志, 掛布智久, 高橋格, 高木利恵子

2015 年 64 巻 12 号 p. 745-752
発行日: 2015/12/15
公開日: 2015/12/29

DOIhttps://doi.org/10.3769/radioisotopes.64.745

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アジア・太平洋地区の中高生を対象とした，IAEAによる原子力・科学技術教育プログラムの開発(2012～2015年)のミッションが進行中である。科学技術・工学・数学(STEM)全体に魅力と興味を感じるような教育プログラムを策定し，選ばれたパイロット国(フィリピン，マレーシア，インドネシア，UAEの4か国)が自国の事情に応じて試験展開するプロジェクトである。この活動の背景と動向，我が国による支援の実績を整理するとともに，今後の展開について述べた。

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総説

環境放射能のグローバル輸送・分布と長期的変動

廣瀬勝己

2015 年 64 巻 12 号 p. 753-764
発行日: 2015/12/15
公開日: 2015/12/29

DOIhttps://doi.org/10.3769/radioisotopes.64.753

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巨大地震と津波に伴い発生した福島第一原子力発電所事故(福島原発事故)は，深刻な環境放射能汚染の原因となり，多くの日本国民ばかりでなく世界的にも大きな衝撃を残した。福島原発事故の影響は長期に及ぶものと懸念されている。言うまでもなく，グローバルスケールで環境の放射能汚染が始まったのは，1945年に広島・長崎へ原爆が投下されて以降のことである。過去の，環境の放射能汚染実態とその変遷に関する知識を総括しておくことが，福島原発事故による放射能汚染の環境影響の今後の変遷を理解するために重要である。特に，人工放射性核種には長寿命核種が含まれ長期にわたって環境中に存在すると共に，地球上の様々な過程に従って拡散・移動している。ここでは，最大の放射能汚染をもたらした大気圏核実験などを取り上げ，長期にわたる放射性核種の環境動態に関する研究成果を紹介し，福島原発事故で起きた環境放射能汚染の将来予測に役立てる。

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連載講座

中性子散乱による原子・分子のダイナミクスの観測

V―2　低次元磁性体のスピンダイナミクス―2次元正方格子反強磁性体Ba₂CoGe₂O₇におけるスピン・ネマティック相互作用の観測―

益田隆嗣

2015 年 64 巻 12 号 p. 765-774
発行日: 2015/12/15
公開日: 2015/12/29

DOIhttps://doi.org/10.3769/radioisotopes.64.765

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スピンと電気分極が同時に秩序化するマルチフェロイック物質は，電場によってスピンが直接制御可能な新しいデバイス材料として注目を集めている。低次元磁性体であるBa₂CoGe₂O₇は，電気分極がスピン・ネマティック演算子で表される珍しい物質として着目されてきた。我々は，中性子磁気散乱と磁化測定を行うことにより，スピン・ネマティック相互作用の存在を観測することに成功し，中性子磁気スペクトルの解析により，電気分極の誘電エネルギーを決定した。誘電エネルギーの大きさも示すスピン・ネマティック相互作用定数は，電場によるスピンの制御のしやすさを表しているため，マルチフェロイックデバイスの性能示数であると提案した。

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放射線を面で捉える

（１）空からの測定

鳥居建男

2015 年 64 巻 12 号 p. 775-782
発行日: 2015/12/15
公開日: 2015/12/29

DOIhttps://doi.org/10.3769/radioisotopes.64.775

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東京電力福島第一原子力発電所の事故により，放射性物質が広範囲にわたって環境中に拡散した。７割が森林と言われる福島県では，放射性物質の汚染範囲を迅速に把握するためには空からのモニタリングが有効である。本稿では有人ヘリコプターを用いた航空機モニタリングをはじめ，現在開発中の無人機を用いた空からのモニタリング技術及び測定手法について概説する。

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