福島県南相馬市内の水田で土壌と水稲の放射性セシウム(Cs)濃度を2013年から2016年までの間調べた。2013年産玄米の137Cs濃度は平均67 Bq/kgで,9点中5点で放射性Cs(134Cs+137Cs)濃度が食品基準値(100 Bq/kg)を超え,同年8月19日に福島第一原子力発電所構内でのガレキ撤去作業に伴い発生した放射性Csの新規降下の影響と思われた。2014年以降の玄米137Csは2~8 Bq/kg程度で,水口の土壌と水稲の137Cs濃度は水田中央や水尻試料より高かった。2013年を除き土壌から玄米への移行係数は水口で高い傾向を示し,灌漑水流入による水稲放射性Cs濃度への影響が示唆された。
原子力発電所事故後の福島県での放射性セシウムの土壌から米への移行の調査を行ってきた。2013年度の調査で近接する4枚の水田のうち1枚の水田で稲穂中の放射性セシウムの濃度が上昇する傾向が認められたので,今回の2014年度~2015年度の調査でその水田の特徴を明らかにすることを目的とした。前年に耕作を行っているにもかかわらず,土壌中の137Csと134Csの濃度が深度とともに減少していることがわかった。この深度依存性は水田によって異なり,稲穂中で比較的高い放射性セシウム濃度が観測された水田では比較的深くまで放射性セシウムが移行していた。4枚の水田は2013年度と2014年度に耕作が行われたが,2015年度には上流の2枚の水田は耕作されなかった。下流の2枚の水田では,2013年度と2014年度には稲穂中に放射性セシウムはほとんど観測されなかったが,2015年度には比較的高い134Csと137Csが観測された。上流の水田の休耕により,下流の水田中で粒径の小さな土壌の移行が変化し,土壌から稲穂への放射性セシウムの移行が影響を受ける可能性が示唆された。
ナシ(豊水及び幸水)について,摘果果実を用いた成熟果実の放射性セシウム濃度の推定・安全性評価の可能性について検討するため,摘果果実と成熟果実の放射性セシウム濃度について調べた。摘果果実及び成熟果実の放射性セシウム濃度は,品種によって大きな違いはみられなかった。成熟果実の137Cs濃度は,全体及び可食部ともに摘果果実の137Cs濃度の約1/4であり,摘果果実の濃度から成熟果実の濃度を推定できることがわかった。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治療感受性予測のために18F-FBPA-PET検査の利用が検討されている。BNCTの生物効果はBPAの細胞内微視的分布に影響を受けるため,マクロ的画像であるFBPA-PETではFBPAの分布の腫瘍/血液比,正常組織/血液比が同等であっても生物効果が異なることが想定され,BNCT適応症例の選択に関してはFBPA-PETは必要条件であってそれで十分ではないと考えられる。今後,BNCTによる臨床的効果を評価し従来のX線治療の効果と比較することによりFBPA-PETの有用性を検証することが可能と思われる。本稿では,CBEの定義や臨床的な腫瘍放射線生物学等から推論されるFBPA-PETの意味すること,FBPA-PETへ期待すること等に関して説明する。