60Co γ線もしくは加速器電子線を照射することで水溶液中の金属イオンの還元を誘起し,メソポーラスシリカ担体の細孔内に貴金属ナノ粒子を合成した。照射前に金属イオン水溶液を細孔内に充填した。照射後,透過型電子顕微鏡(TEM)によって細孔内に貴金属ナノ粒子が観察された。金属種の化学状態をXANESで調べ,照射線量に伴って金属成分が増加することを見出した。これらの結果は金属イオンの還元が細孔内でも進行し,金属ナノ粒子を生成することを示した。
低エネルギー電子線を用いて生卵の卵殻のみを殺菌し可食部の線量を我が国で食品に認められる照射限度値(0.10 Gy)以下にするための照射条件を,線量計測実験とモンテカルロシミュレーションで評価した。その結果,卵殻の深度線量分布の評価から加速電圧80–200 kVの照射条件が有効であった。可食部の線量は,80–150 kVの電子線照射で0.10 Gy以下となった。また,電子線のエネルギーが低い程,制動X線の寄与は少なく可食部の線量も減少した。
CaF2フローセル検出器を用いて,排水中トリチウム濃度限度(60 Bq/cm3)の1/10を検出できる通水型トリチウム連続測定装置の開発を進めてきた。この装置は液体シンチレーターを使わないため,放射性有機廃液を生じない。本研究では数年前に試作器を製作し連続測定の可能性を示したが,測定に10,000秒を要した。そこで三連フローセル検出器を製作して鉛と銅の遮蔽を施した結果,600~3000秒測定での検出限界は,およそ6 Bq/cm3を達成し,また,それ以下になることもあった。
学術雑誌のオンライン検索を利用して,核医学で利用されるRIの種類や頻度の俯瞰を試みた。最近10年において研究利用されるRIの多くは,ポジトロン放出核種や治療用のβ核種であり,診断と治療,すなわち,セラノスティクスを具現化するRI利用が進展している傾向を得た。また,α核種の利用はこの10年間における大きな変化の一つであり,核医学における新たな賦活剤として,今後の利用とそれに伴う成果報告の増加が期待される。