花崗岩中には, 純粋な熱中性子を照射したさいに比較的短い半減期の放射性核種を生成する, Al, Mn, Naなどの不純物元素が含まれている。花崗岩薄片試料中の中のこれらAl, Mn, Naなどの不純物元素の二次元的な分布を観察するために, 中性子照射後の冷却時間変化と写真フィルムを用いたオートラジオグラフ観察を行った。しかしながら, 従来法でAlの分布パターンを検出するさいには,
27Alの中性子捕獲反応によって生成する目的核種,
28Alの放射能以外, 混在する速中性子による妨害反応
28Si (n, p)
28Alに基づく
28Al生成の寄与が大きく, またγ線線量率の高い原子炉照射に伴い, 花崗岩薄片試料から写真フィルムに対して感度の高いアフターグローが発生するために, 得られたパターンが必ずしも純粋に元素としてのAlの分布を反映していないという欠点があった。そこで, 今回の実験では, この2点を考慮し, 純粋な熱中性子が得られ, γ線線量率の比較的低い, 熱中性子照射設備 (京都大学原子炉黒鉛設備圧気輸送管) を用いた。その結果, アルミニウムの微細な分布パターンやマンガンの鉱物間分布を簡便に得ることが可能となった。
また同様の実験を, 写真フィルムに代えて, イメージングプレートを用いて行ったところ・非常に高感度であり, 多面的に利用できる定量的情報を得ることが可能であることが確認できた。中性子放射化オートラジオグラフ法においてイメージングプレートを利用するさいの利点に関して, 従来の写真観察法と比較して議論した。
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