テクネチウム製剤の原料である放射性同位元素モリブデン-99(以下「
99Mo」という)は100%を輸入に依存している。
99Moの9割以上は,世界にある数基の原子炉により生産されている。限られた原子炉によって生産されているため,近年一部の原子炉の故障等により,世界的な
99Moの供給不足が生じるという問題が連続して発生した。原子力委員会はこの問題に対して「原子力政策大綱に示している放射線利用に関する取組の基本的考え方に関する評価」(平成22年6月1日)の報告書に,「関係行政機関が,産業界・研究開発機関等の関係機関と緊密に連携・協力しつつ,国としての対応について検討を進めていくことが必要である。」との考え方を示した。
これを受けて,官民(内閣府,厚生労働省,文部科学省,研究機関((独)日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という),(独)放射線医学総合研究所),医学関係学会,事業者等)の関係者が,
99Moとテクネチウム-99m(以下「
99mTc」という)の安定供給のあり方について検討する検討会
1)が開催され,筆者は委員長としての責務を負うこととなった。本稿ではその検討会の報告をもとに,我が国における
99Moの安定供給に向けた方向性と課題について概説する。
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