中性子の外部被ばくについての知見を得るため, γ線測定用熱蛍光素子並びに中性子測定用金箔検出器とポリエチレン減速材を組み合わせることにより, 深部線量や中性子エネルギースペクトルを測定・評価できるパッシブ球形中性子線量計を作製し, 近畿大学原子炉照射設備の原子炉放射線場において, 熱中性子入射に基づく深部線量並びに中性子エネルギースペクトル測定を行った。
熱中性子深部線量測定において, 水素による (n, γ) 反応で放出されるγ線は, BeO系熱蛍光素子を用いて直接測定し, 窒素による (n, p) 反応で放出される陽子は, 金箔の放射化法により測定した深部熱中性子束より計算で算出した。その結果, 熱中性子入射に基づく吸収線量指標 (
DI) は, 中性子線量計表面での吸収線量 (
DS) を用いて,
DI=1.1
DSで評価できることがわかった。
中性子エネルギースペクトル測定において, 中性子線量計内部にある金箔検出器の10
-9MeVから20MeVまでの応答行列を作成し, 中性子線量計読み取り値深部分布と作成した応答行列を用いて, 中性子エネルギースペクトルをアジャストメントした。その結果, 1/
E中性子エネルギースペクトルと核分裂中性子エネルギースペクトルからなる近畿大学原子炉照射設備における原子炉放射線場の中性子エネルギースペクトルが精度良く再現された。このことより, 球形ポリエチレン減速材付き中性子線量計並びにその応答行列を用いた中性子エネルギースペクトル測定の有用性が評価され, より精度の高い中性子線量評価の可能性が示された。
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