PCB(ポリ塩化ビフェニル)関連物質を分解するために,放射線グラフト重合法を適用して,パラジウム(Pd)を担持させた繊維を作製した。ジメチルアミノエチルメタクリレートグラフト重合繊維にPdアニオン種(PdCl42−)を吸着させ,−3~25°Cの温度でヒドラジン(N2H4)を用いて金属Pdに還元した。還元温度を−3°Cとして作製したPd担持繊維が,水素源としてヒドラジンを使う2-C6H4ClOHの脱塩素化で最も高い活性を示した。2時間の反応時間で2-C6H4ClOHをフェノール(2-C6H4ClOH)へほぼ100%脱塩素化できた。
ポリエチレン(PE)繊維へのグリシジルメタクリレート(GMA)の放射線前照射乳化グラフト重合及びそれに続く化学修飾によって,アニオン交換繊維を作製した。まず,PE繊維へ20~200 kGyの範囲で電子線を照射し,GMAをグラフト重合した。続いて,GMAグラフト鎖中のエポキシ基をジエチルアミノ(DEA)基へ転化した。このときモル転化率は89~93%であった。線量を変えて,グラフト率85±8%の範囲で作製したアニオン交換繊維の,DEA基密度に対するCl−吸着量のモル比は,線量によらず1であった。一方,20 kGyで作製したアニオン交換繊維のウシ血清アルブミンの吸着量は,200 kGyで作製したアニオン交換繊維のそれに比べて3.4倍高い値を示した。
試料中に微量に含まれるLi, Be, Bなどの軽元素は他の重い元素に比べ分析が難しいとされている。本稿ではMeV領域のイオンビームを用いた元素分析法及び核反応を用いる放射化分析について簡単に述べる。具体例として,MeV陽子マイクロビーム照射によって起こる核反応で放出されるγ線を用いて,鉄鋼中に存在する20~100 ppmのホウ素の二次元及び三次元の分析を行ったので,その方法を紹介する。
食品照射の海外動向について,2017年の実施状況をまとめた。総処理量は中国の550,000トンが最も多く,次いでベトナムの110,000トンであり,世界の食品照射は急速に拡大している。検疫を目的とした新鮮果実・野菜の照射処理では,米国がメキシコなどから31,000トン輸入している。アジア・オセアニア諸国では米国への輸出だけでなく,オーストラリアやベトナムなど地域内での照射農産物の相互の輸出入を展開している。