わが国の白米の放射能汚染に対する全地球的な放射性降下物の影響を検討すべく, 全国17地点の国公立水田試験圃場からの試料採取を1959年以来37年間継続し, 放射能測定を行った。
白米中の
90Srと
137Cs含量をmBq/kgの単位で表すと, 1963年の全国平均は
90Srで269,
137Csで4179の値となり, 経年曲線上最初にして最高のピークを示した。その後, 白米中の両核種の含量は急減を続け, たとえば1975年には29と192, また1995年には5と46の値をそれぞれ示した。
90Srや
137Csなどの核種が米粒中に吸収される際に, 外気に触れる茎葉や籾殻からの直接吸収と, 水田表層土中の残留核種の経根的な間接吸収との2種類の経路が考えられる。37年間の観測値を解析した結果,
90Srと
137Csの両核種とも, 大気中降下量の最盛期であった1963年前後では白米汚染全量の70-95%を直接汚染が占めること, しかし降下量が検出し難いほど減少した1985年以降では白米汚染のほとんどが間接汚染に起因すること, などが明らかになった。
そのほか日本海側と太平洋側での白米の汚染レベルの地域差, また白米と玄米における
90Srと
137Csの分布比率の差異, さらに両核種の植物体内移動の難易の裏付け, などを議論した。
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