導電性バナジン酸塩ガラスの電気物性と局所構造の相関に関する最近の研究成果を紹介した。バナジン酸塩ガラスはV
IV(あるいはV
III)―O―V
V間の電子ホッピングにより10
-7~10
-5 S cm
-1の導電率を有することで知られている。20BaO・70V
2O
5・10Fe
2O
3ガラスについて,DTA測定により判明した結晶化ピーク温度(
Tc)近傍の500℃の熱処理で導電率が10
-5から10
0 S cm
-1へ上昇した。メスバウアースペクトルから,このときFeO
4四面体の歪みを反映する四極分裂(Δ)の値は0.70から0.54mm s
-1に減少することが判明した。バナジン酸塩ガラスは熱処理で構造緩和が起こり局所的な歪みが減少し,その結果電子ホッピングが起こりやすくなったと考えられる。すなわち,ガラスの局所歪みと導電性の間に密接な関係があることが明らかになった。メスバウアースペクトロメトリーはリチウムイオン電池等二次電池の正極材料としての有望な候補であるバナジン酸塩ガラスをはじめ,様々な機能性ガラス,セラミックスの構造について重要な知見をもたらす。
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