ブドウ球菌感染マウスを用いて, 体内における
3H-tetracyclineおよび細菌の分布を検討した。感染には黄色ブドウ球菌のSmith-diffuse株を用い, 接種法としてはムチンを用いた場合と用いない場合の両方について行なった。
3H-tetracyclineは菌接種後10分以内に静脈内投与した。薬物投与後適当な時間間隔について, 厚さ40μの全身切片をミクロトームによって切りだし, 全身オートラジオグラフィおよび全身オートバクテリオグラフィによる検討を行なった。その結果によると,
3H-tetracyclineは静脈内投与後すみやかに中枢神経をのぞく各組織に移行するとともに, 体内の菌の増殖は明らかに抑えられた。ただ, 菌接種にあたってムチンを使用した場合としない場合では, 菌の分布において明らかな相違があった。すなわち, 前者では薬物投与後どの観察時点においても切片上に菌がほとんど認められなかったのに対し, 後者では, 薬物投与後も早期においてはなお多量の菌が全身的に検出され, ある程度時間が経過してはじめてしだいに減少した。
3H-tetracyclineの分布においても, ムチンを使用した場合には, 腹腔および脾の白色脾髄周囲に放射能濃度が高いなどの差異がみられた。これらの差異が生じた理由について考察した。
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