新潟県における湖沼水の化学的特徴を把握するため,新潟県内の二つの湖沼(佐潟,鳥屋野潟)試料中の酸素安定同位体比(δ
18O)をはじめ溶存有機炭素濃度(DOC)及び主要イオン濃度を測定した。湖沼試料は上記の湖沼の計5地点において,2004年から2006年まで概して月1回ごとに採取した。更に降雨現象の湖沼に及ぼす影響を調査するため,2005年6~7月に,上記の5地点で降雨の前後におけるδ
18O並びに主要イオン濃度を測定した。
その結果,主として以下のことが明らかになった。(1)佐潟の環境水におけるδ
18Oは県内の他の環境水の値に比べて大きく,特に夏季において顕著であった。これは蒸発による効果に加え,甲殻類プランクトンによる活動(殻による同位体交換)といった生物学的過程や周辺地下水からの涵養が影響している可能性が考えられる。(2)佐潟の環境水中のδ
18Oにおいて顕著な経時変化は見られなかった。(3)湖沼水のδ
18O及びイオン濃度に及ぼす降水の影響は,佐潟と鳥屋野潟の水試料において明らかに異なる傾向を示した。(4)佐潟の環境水ではDOCとδ
18Oとの間に良好な相関が見られたが,鳥屋野潟の環境水では顕著な相関は見られなかった。
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