RADIOISOTOPES
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63 巻, 1 号
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原著
  • 滝澤 行雄, 山下 順助, 石郷岡 清基
    2014 年 63 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    日本酒のX線照射マウスに対する放射線防護効果を検討した。供試の日本酒は米と米麹のみで醸造した純米酒(アルコール濃度10.5%)で,9週齢雄性C57BL/6JJms系マウスに純米酒0.6mL/匹を経口投与し,その約30分後にX線7.8Gy(照射線量率1.078Gy/分)を照射した。また,純米酒0.2mL/匹を7日間反復経口投与後30分後にX線を7.8Gy照射し,引き続き同様に7日反復経口投与を行った。対照マウスには普通酒(アルコール濃度15.0%),純エタノール(10.5%)及び生理的食塩水を経口投与した。なお,普通酒は米と米麹に,醸造アルコールを加えている。
    X線照射マウスに対する放射線防護効果は30日間の生存率で評価した。その結果,大量1回投与(0.6mL)において,純米酒投与群の生存率は80%でエタノール投与群よりも高かった。生理食塩水投与群では26日目に全頭死亡した.純米酒投与群と生理食塩水投与群との間に有意差(p<0.01)が認められた。少量連続投与(0.2mL)においては,純米酒投与群の生存率は普通酒投与群より高かった。純米酒投与群の生存率は生理的食塩水投与群より有意に高かった(p<0.05)。日本酒はアルコ-ル飲料の中でもアミノ酸が多く,特にアミノ酸総量では純米酒(1771mg/L)が普通酒(932mg/L)の約2倍高であり,放射線防護効果にアミノ酸の寄与が思考される。純エタノ-ルにも防護効果はみられるが,日本酒に比べ低かった。以上,唯一日本酒のみの特徴といえるアミノ酸類に放射線防護効果があることが示唆された。
資料
総説
  • 新山 大樹, 太田 千香子, 小泉 篤, 桑野 真由美, 中川 太
    2014 年 63 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    PETとMRI双方を利用した複合的な画像診断は,PETによる機能画像及びMRIによる形態画像それぞれ単独の評価に比べて,統合的な情報により正確で迅速な疾患の検出やステージング評価,治療モニタリング及び経過観察の向上という利点が考えられる。PETとMRIはどちらも臨床的な手段としてすでに確立されており互いに相補的な情報を提供するものであるが,さらにそれぞれの装置を統合化させたPET/MRI装置ではそれ以上の広範囲な臨床応用が期待される。特に統合型PET/MRI装置のメリットとして,一回の検査で両方の撮影を行うことにより,高精度の位置情報を持つ画像が得られるだけでなく従来撮影された単独のPET検査とMRI検査をソフトウェア上で重ね合わせた画像では実現できなかった情報を得られる可能性がある。本稿ではこれらの期待を実現可能にするべく発表された臨床用PET/MRI装置の総論として主な特長及び課題を報告する。
連載講座
メスバウアースペクトロメトリーの基礎と応用
  • 久冨木 志郎, 西田 哲明
    2014 年 63 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    導電性バナジン酸塩ガラスの電気物性と局所構造の相関に関する最近の研究成果を紹介した。バナジン酸塩ガラスはVIV(あるいはVIII)―O―VV間の電子ホッピングにより10-7~10-5 S cm-1の導電率を有することで知られている。20BaO・70V2O5・10Fe2O3ガラスについて,DTA測定により判明した結晶化ピーク温度(Tc)近傍の500℃の熱処理で導電率が10-5から100 S cm-1へ上昇した。メスバウアースペクトルから,このときFeO4四面体の歪みを反映する四極分裂(Δ)の値は0.70から0.54mm s-1に減少することが判明した。バナジン酸塩ガラスは熱処理で構造緩和が起こり局所的な歪みが減少し,その結果電子ホッピングが起こりやすくなったと考えられる。すなわち,ガラスの局所歪みと導電性の間に密接な関係があることが明らかになった。メスバウアースペクトロメトリーはリチウムイオン電池等二次電池の正極材料としての有望な候補であるバナジン酸塩ガラスをはじめ,様々な機能性ガラス,セラミックスの構造について重要な知見をもたらす。
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