RADIOISOTOPES
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59 巻, 11 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 坂本 信生, 狩野 直樹, 王 玉丹, 高 立〓, 今泉 洋
    2010 年 59 巻 11 号 p. 623-636
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル オープンアクセス
    海藻バイオマスの希土類元素(REEs)に対する吸着剤としての有効性を検証するため,Caで置換した3種類の海藻(褐藻のイソモク,紅藻のベニスナゴ,緑藻のアナアオサ)の乾燥試料を用いて,既知量のランタニド元素(La,EuあるいはYb)を含んだ水溶液中からの吸着実験を単一成分系で行った。更に,得られたデータを,Langmuir吸着等温式やFreundlich吸着等温式に適用することにより,吸着除去メカニズムを検討した。また,走査電子顕微鏡(SEM)により,各試料の金属吸着前後のそれぞれの表面状態について比較検討し,本研究で用いた貝殻の特性を考察した。
    その結果,主として以下のことが明らかになった。(1)褐藻のイソモク,緑藻のアナアオサでは,金属吸着前後で表面形状の変化がほとんど見られなかったのに対し,紅藻のベニスナゴでは見られた。(2)海藻バイオマスによるランタニド元素の吸着は,Langmuir及びFreundlich吸着等温線に十分に適応する。特にLangmuir等温線により適合することから,単分子層による吸着が支配的と言える。(3)海藻バイオマスは,REEsの有用な吸着剤となりうる。特に緑藻のアナアオサは,La除去における有望な吸着剤といえる。(4)海藻バイオマスによるランタニド元素の吸着においては,イオン交換が主要なメカニズムであると考えられる。
総説
  • 菊地 淳, 関山 恭代, 伊達 康博
    2010 年 59 巻 11 号 p. 637-658
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル オープンアクセス
    生物の行う代謝解析において,核磁気共鳴(NMR)法は広く用いられる分光技術である。これは,NMR法の対象とする試料が気体・液体・固体から,生体の非侵襲計測も含み幅広いこと,原子レベルでの情報選択性がある一方で,実測スペクトルには実に多くの情報量が含まれている,といった利点があるためと考えられる。本稿では,蛋白質のNMR解析がアミノ酸選択標識の時代から均一標識試料の作成を経て,多次元NMR法による大量情報取得により,立体構造解析が可能になったことに例え,代謝解析においても標識法とその多次元NMRデータ取得,更には高効率な計測を可能とする技術開発によりどのような将来が展開し得るかを議論した。
資料
  • 社団法人 日本アイソトープ協会  医学・薬学部会 医療放射線管理専門委員会, 一般社団法人  日本核医学会 放射線防護委員会
    2010 年 59 巻 11 号 p. 659-673
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル オープンアクセス
    日本核医学会放射線防護委員会と日本アイソトープ協会医学・薬学部会医療放射線管理専門委員会は,本邦の医療施設における研究ボランティアの放射線被ばくに関する実態を明らかにし,今後,国内における適切な研究ボランティアの放射線防護の枠組みを検討するための論点を抽出することを目的として,全国の核医学診療施設を対象にアンケート調査を実施した。過去2年以内に放射線被ばくを伴う臨床研究又は治験を施行したと回答した82施設を解析対象とし,1)治験・臨床研究の内容,2)ボランティアの放射線被ばくに関する審査体制,3)ボランティア選定,4)各施設における被ばく線量制限,5)インフォームド・コンセントの必要性に関し分析した。
    健康人ボランティアは,第I相治験とマイクロドーズ試験に加えて,臨床研究の対象者に含まれていた。ボランティアの放射線被ばくに関する審査にあたる委員会として「臨床研究または治験の実施の適否を審査する通常の倫理審査委員会」との回答が64施設,「倫理審査委員会とは別の専門委員会」が9施設,両方の委員会名を挙げた施設が7施設であった。委員会の中に放射線医学の専門家を含まない施設が23施設(28%)あり,そのうち15施設は必要に応じて委員会に専門家を招集するシステムがなかった。線量制限は,施設間で様々であったが,全ての施設が50mSv以下としていた。放射線被ばくに関するインフォームド・コンセントは,十分な内容を網羅していた。
    本調査にて,本邦においては,臨床研究又は治験での研究ボランティアの被ばくについての審査は倫理審査委員会がその役割を担い,施設の放射線医学の専門家(医師,診療放射線技師,薬剤師)が助言や審査,管理に努めており,その結果,ほとんどの研究が,ICRPや米国,英国の基準から大きく外れることなく実施されていることが判明した。一方で,委員会のメンバーに放射線の知識を有する専門家を入れること,放射線の安全性を評価する委員会を設けることについて必要だと思っているが実現できないという施設と,そもそも委員会が必要であるとの認識を持っていない施設があることも示唆されたため,まずは施設内での体制の整備を推奨し,必要ならば他施設や外部組織へ審査の委託ができる体制作りを勘案する必要性があると考えられた。加えて,施設ごとの研究ボランティアに許容されうる放射線被ばくの規制線量に対する考え方が定まっていない状況の改善も望まれる。
連載講座
中性子回折の基礎と応用(基礎8)
  • 武田 全康
    2010 年 59 巻 11 号 p. 675-692
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル オープンアクセス
    進行する波が平坦な境界(界面)に当たると反射,屈折現象が起こる。中性子は,粒子であるとともに波の性質も併せ持つため,界面では,ある条件下で反射・屈折といった光学的性質を示す。中性子反射率法は,この中性子が示す光学的性質を利用して,物質がそれぞれ固有に持つ散乱長密度の深さ方向の変化を測定することによって,測定対象となる物質の厚さ方向の構造変化を非破壊的に調べる手法である。中性子反射率法は,ナノサイエンス,ナノテクノロジーの研究において,新規な物理現象や機能発現の場となっている積層構造を持つ物質の,埋もれた界面に関する構造情報を得るのに,X線反射率法と並び重要な研究手法となっている。
中性子回折の基礎と応用(応用25)
  • 鳥飼 直也
    2010 年 59 巻 11 号 p. 693-701
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル オープンアクセス
    中性子反射率(Neutron Reflectivity,NR)測定は,平滑な物質界面において示される中性子の光学的な反射現象を利用し,試料深さ方向にサブナノメートルの高い空間分解能を有する測定手法で,さまざまな物質の界面や薄膜の精密構造観察に広く利用されている。ソフト界面研究におけるNR法の最大の利点は,重水素ラベルにより物質の性質を大きく変えることなく物質内に中性子に対するコントラストを付与できることにある。また,中性子が有する高い物質透過性によって,固/液界面のような物質内に深く埋もれた界面についても非破壊で調べられる。ここでは,同手法による多数のソフト界面研究の中から,その利点が活用され,かつ測定対象が実用の材料や基盤技術に関連することを念頭に,1)高温条件下での低分子液晶/高分子界面,2)作動後の高分子多層デバイス中の高分子/高分子界面,3)水と接した状態のモデルレジスト高分子薄膜,4)ボルタンメトリックサイクルによるレドックス反応下の電気化学界面,を選び解説した。
ミニレビュー
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