東京電力福島第一原子力発電所からの環境中へ放出された放射性ヨウ素(131I)について,2011年3月以降における東京大学駒場1キャンパス内の到達時期,及び沈着後の動態を評価した。RI実験施設からの排気モニタで評価された3月15日から16日の排気に含まれる単位体積あたりの放射能の変動は5.2 km離れたモニタリングポストのデータから得られた挙動とよく一致し,放射性物質の到達時期の考察に有効であることを示した。同キャンパス内の3月22日及び23日の水たまりに含まれた131Iは2,830 Bq/kgから11,100 Bq/kgであり,21日の降水にはこれ以上の濃度が含まれていたと想定される。
一般の病院等ではX線撮影装置がその有用性から広く普及している一方,患者・介助者や医療従事者への不必要な被ばく量増大の可能性がある。本研究では放射線防護教育を目的としたX線撮影室内での放射線散乱の可視化図の作成を行った。モンテカルロシミュレーションコードPHITSを用いて,PHITSの利用初学者においても簡便に作成できる放射線の散乱を表した図を作成することで,端的かつ的確な放射線防護教育と不必要な被ばくへの注意喚起ができると考えられる。
90Srは,ウランから生じる代表的な核分裂生成物であり,半減期が約29年の放射性核種である。90Srは,純β線放出核種でありγ線を放出しないため,γ線放出核種と比べて計測が難しい。その迅速な計測のために多くの分析方法の開発が進められてきた。ここではそれらの技術を概説するとともに,特に,高周波誘導結合プラズマ四重極形質量分析計(ICP-QMS)の東京電力福島第一原子力発電所事故後の進展に焦点を当てて現状と展望を述べる。
サイバーナイフ(CyberKnife®)は,20世紀末に開発されたロボットアームにX線照射装置を装着した放射線治療装置であり,高い自由度でがん病巣に放射線を集中させて高精度照射を実現させる。例えば,頭蓋内病変に対して金属フレームを使わずに分割照射を行ったり,呼吸運動で移動する肺や肝の病変を追跡しながら照射したりできる。骨転移等の局所制御にも有効で,治療対象となるがん病変は多いため,放射線治療の新たな選択肢として期待される。