目的:
18F-Fluorodeoxyglucose(FDG)を用いたpositron emission tomography(PET)はしばしば低悪性度の腫瘍に陰性を示す。一方,
11C-Acetate(AC)を用いたPETはFDG-PET陰性の高分化肺腺癌,前立腺癌,高分化肝細胞癌に陽性を示すことが知られている。筆者は最近非小細胞肺癌の描出と腺癌の悪性度予測に対するAC-PETの有用性をFDG-PETと比較検討したので,それを紹介する。
方法:多施設共同研究にて原発性非小細胞腺癌227例,良性肺病変56例に対して,術前にAC-PET及びFDG-PETを施行した。良悪性を鑑別する感度と特異度,腺癌の悪性度を評価する有用性をACとFDGの間で比較した。また腺癌における腫瘍内脈管浸潤及び胸膜浸潤の有無におけるAC及びFDG集積度を比較した。Standard uptake value(SUV)の測定は肺病変に対しては対側肺と病変の集積度の比(SUV-CR)を用いた。
結果:非小細胞肺癌に対する感度はACでは0.71,FDGでは0.57であり,ACはFDGより有意に感度が高かった(p<0.001)。特異度には両者間に差はなかった。非小細胞肺癌のうち,146例の高分化腺癌においてはACの感度(0.62)はFDGの感度(0.37)より有意に高かった(p<0.001)。しかし51例の中低分化腺癌及び30例の非腺癌においては両者間に感度の差はなかった。169例の臨床病期IA期(3cm以下,リンパ節及び遠隔転移無し)の腺癌において腫瘍内の脈管・胸膜浸潤の陽性症例は陰性症例よりFDG集積度が高かったが(p=0.04-<0.001),AC集積度はそれら浸潤所見の有無において有意差はなかった。
結語:非小細胞肺癌の診断において中低分化腺癌及び非腺癌の描出においてはACとFDGは同等であるが,高分化肺腺癌の診断においてACはFDGより有用である。また腺癌の腫瘍浸潤度の予測においてACは有用でなく,FDGに劣る。
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