照射鶏肉の的確な検知のために, 脂肪の放射線分解によって生成する2―アルキルシクロブタノン (RCB) と炭化水素 (HC) を, 共通した前処理操作で普及度の高いガスクロマトグラフイ (GC/FID) を使い, 同時に分析した。
2.7kGy照射鶏肉では, C
15: 0は1.5μg/g・fat, C
1-14: 1は1.9μg/g・fat, C
17: 0は0.71μg/g・fat, C
1-16: 1は0.60μg/g・fat, C
8-17: 1は3.0μg/g・fat, C
1, 7-16: 2は4.3μg/g・fat検出した。また同じ試料でDCBは0.53μg/g・fat, TCBは0.17μg/g・fat, DeCBは0.14μg/g・fat, TeCBは1.4μg/g・fat検出できた。0.5kGyの低線量でもHCおよびRCBが検出された。
また0.5kGyから10kGy照射の範囲で鶏肉から生成された6種のHCおよび4種のRCBの生成量は線量依存性を示した。
オレイン酸から分解生成するC
8-17: 1, C
1, 7-16: 2, TeCBの合計モル生成量は脂肪1gあたり, 9.6nmol/kGyであった。またパルミチン酸から生成するC
15: 0, C
1-14: 1とDCBの合計モル生成量は5.2nmol/kGy/g・fatであった。
(1) 各食品の脂肪酸の組成量は一定ではなく, 親の脂肪酸の組成の分析は煩雑である。 (2) 検査食品自体からの飽和炭化水素等のブランク値は測定不可能である。 (3) 鶏肉では含有量が少ないステアリン酸からの生成物は, 低線量では測定精度が悪い。 (4) トリグリセリド分子中の脂肪酸は必ずしも同じではなく, 同一の食品から得られる脂肪も多くのトリグリセリドの複雑な混合物であるためC
n-2: 1/C
n-1比は一定でない。以上の4点の理由からC
n-2: 1やC
n-1の比を照射の判定基準に使うことは問題がある。
本研究結果から基本的に, HCのうちC
1, 7-16: 2, C
8-17: 1, C
1-14: 1の定量と, 高含有量脂肪酸から生成するTeCBおよびDCBを同時に分析することによって, 照射の的確な判定を行うことができることが明らかとなった。
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