2, 2'-チオビスー4, 6-ジクロロフェノール, すなわちビチノール (ビチン) は肺吸虫症に対する駆虫剤であるが, われわれはビチンを経口投与した場合, 体内の臓器での分布状態を調ベるため,
35Sで標識化したビチンをイヌに飲ませ, 24時間後と48時間後にイヌを解剖して, その臓器中の放射能を測定した。その結果, ビチンは大部分はふんに混入して体外に排泄されるが, 体内では, 24時間後では尿, 肝臓, 肺臓, 腎臓, 膵臓, 48時間後では尿, 腎臓, 膵臓, 肝臓, 肺臓の順に多く吸収され, そのほかの臓器にも少量ずつ分布することがわかった。肺臓にも存在するので, ビチンは肺吸虫症 (ジストマ) の駆虫剤として効果のあることが明らかにされた。また, 日光に長時間さらしたビチンのエタノール溶液の吸収スペクトルをビチンを飲んだイヌの尿の吸収スペクトルと比較することにより, ビチンが体内で酸化物に変化しているように推定される。
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