RADIOISOTOPES
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68 巻, 8 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集
粒子ビームサイエンスの進歩と展望―HIMAC の成果を中心に―
6 章 【原子分子】HIMAC が切り拓いた高エネルギーイオン原子衝突の最前線
7 章 【放射線安全研究】高エネルギーイオン加速器の放射線安全研究
  • 中村 尚司
    2019 年 68 巻 8 号 p. 539-541
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    HIMAC施設の建設が1984年に決まり,放射線遮蔽安全設計を全面的に依頼された。当時,重イオン輸送計算コードはなく,ともかく安全側の評価をしたが,その時の苦労が,その後の重イオン輸送計算コードPHITSの開発等の研究の発展につながった。HIMAC施設が完成後,それまでほとんどなかった重イオンによる2次粒子,特に安全設計上重要な中性子生成の実験データを系統的に取得した。これらの成果は,世界中の重イオン加速器施設の設計にも広く利用されている。

  • 中村 尚司
    2019 年 68 巻 8 号 p. 543-552
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    重イオンによる厚い標的からの中性子生成は,加速器施設の遮蔽安全設計において放射線源となる非常に重要なデータである。様々なエネルギーのHeイオンからXeイオンに至るビームをC, Al, Cu, Pbの厚いターゲットに入射して,生成される2次中性子のエネルギースペクトルを,0, 7.5, 15, 30, 60, 90°の角度で,有機液体シンチレータを用いて飛行時間分析法(TOF)により測定した。得られたスペクトルは互いに良く似ていて,次の3種類の成分を持っている。前方方向で特に顕著な入射粒子が直接中性子をはじき出すノックオン成分,核内カスケードによる成分,複合核生成後の蒸発成分である。この実験結果はPHITSコードによる計算と比較していて,全般的にファクター3以内で良く一致している。また,Moving Source Modelという簡易評価式でもうまく表現できることがわかった。さらに,5 MeV以上のスペクトルを角度積分した結果は2つの指数関数の和で与えられ,これを0°から90°で積分した前方方向の全中性子生成量を与える近似式を得た。

    これらのデータは高エネルギー重イオン加速器施設の安全設計における中性子遮蔽計算の線源評価にとって不可欠のデータであり,世界中で広く利用されている。OECD/NEAの遮蔽ベンチマーク実験データベース(SINBAD)にも登録されている。

  • Lawrence Heilbronn, Yoshiyuki Iwata
    2019 年 68 巻 8 号 p. 553-557
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    The measurements of secondary neutron production cross sections from heavy-ion interactions play a key role in the development of transport model calculations that are used in a wide variety of applications. We briefly describe and highlight experiments conducted at HIMAC since the late 1990’s that measured secondary neutron cross sections over a wide variety of beam species, beam energies, and heavy target materials.

  • 中村 尚司
    2019 年 68 巻 8 号 p. 559-565
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    100 MeVを超える中性子まで測定できる検出器として,大型有機液体シンチレータや自己TOF測定器を開発し,さらにBiとCの核破砕検出器やTEPC(組織等価比例計数管)も用いて,重イオン生成中性子の鉄とコンクリートの遮蔽体透過実験を行った。400 MeV/核子の炭素イオンを厚い銅ターゲットに入射し,前方に発生した中性子が様々な厚さの鉄とコンクリートを透過した後の中性子スペクトルを測定した。実験値は計算値と比較した。この結果は高エネルギー重イオン加速器遮蔽の世界で唯一の実験データとして貴重であり,OECD/NEAの遮蔽ベンチマーク実験のデータベース(SINBAD)にも登録されている。

  • 八島 浩, 中村 尚司
    2019 年 68 巻 8 号 p. 567-573
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    高エネルギー荷電粒子の核破砕反応による核種生成断面積の系統的な実験データを取得するための照射実験が様々なエネルギーの陽子からArに至る重イオンビームを用いて行われた。照射実験では銅ターゲット中に様々な試料を挿入して生成放射性核種をGe検出器で測定した。得られた結果より,高エネルギー荷電粒子入射によって生成する核種の生成断面積及び誘導放射能のターゲット内分布はターゲット核と生成核種との質量数差に大きく依存すること,プロジェクタイルフラグメントの生成によって特徴的な放射能分布をもつことがわかった。本研究で得られた成果は高エネルギー重イオン加速器施設の安全設計や高エネルギー重イオン核反応計算コードのベンチマークデータなど重イオンビーム放射線科学分野の進展に貢献している。

  • 仁井田 浩二, 岩瀬 広, 中村 尚司
    2019 年 68 巻 8 号 p. 575-583
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    重イオン輸送コードPHITSの開発に至った歴史的経緯と,同コードの特徴について解説する。また,同コードの様々な分野への応用例を示し,ベンチマークとなる物理量について,放医研HIMACで測定されたデータとの比較結果を示す。

  • 米内 俊祐
    2019 年 68 巻 8 号 p. 585-592
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/08/15
    ジャーナル オープンアクセス

    炭素線治療施設の治療運用に係わる放射線防護のために,HIMACを用いて行われた実験的研究について紹介する。これらの研究の結果は,炭素線治療において二次中性子等で生じる照射野外線量は他の放射線治療と同等もしくは低いこと,また,職業被ばく,公衆被ばく,介助者・介護者の医療被ばくは現行の国内規制基準を十分満足しており,炭素線治療施設における防護が既存の規制で対応できていることを実証した。

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